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心優しい高校剣士 津波直前、友人の親戚を救出

■葛尾村落合 吉田裕紀さん 18
 裕紀(ゆうき)さんは平成23年3月1日に南相馬市の小高工高機械科を卒業して10日後、浪江町請戸地区で津波に遭ったとみられている。
 当日は葛尾村落合の自宅を出発、葛尾中の同級会の会場を予約するため浪江町に向かった。友人と請戸にいた時、地震が起きた。友人の親戚夫婦を車で浪江町役場近くの避難所に送った。その後、友人の祖父母も助けようと請戸に再び向かい、途中で大津波にのまれたらしい。
 母浩美さん(41)が地震直後に裕紀さんの携帯電話にメールを送ると、すぐに「大丈夫」と返信があった。その後は連絡が途絶えた。翌12日にメールが届く。「今、友人の親せきちょっと見て回ってる」。送信日時は前日の午後3時37分。津波が到達する直前だった。
 車が好きだった。高校卒業を前に運転免許を取得。2月に買った車で4月からは浪江町の就職先に通うはずだった。車は請戸地区の民家の壁にぶつかった状態で発見された。浩美さんと父裕一さん(43)は浪江町民の一時帰宅に同行するなどして裕紀さんを捜し続けた。1年10カ月となった今も見つかっていない。
 妹との2人きょうだい。葛尾小1年で葛尾少年剣道団に入団、葛尾中剣道部では部長を務めた。小高工高でも剣道部で東北大会に出場するなど活躍した。
 浩美さんが「人の悪口を聞いたことがない」と話す通り、常に相手を思いやる性格だった。高校卒業に合わせて裕紀さんが両親に宛てた手紙がある。「社会人になったら今までの恩返しを何かできればと思います」。育ててくれた感謝の気持ちがつづられていた。
 震災から半年が過ぎた23年9月に郡山市で行った告別式には、友人ら500人余りが参列した。会場関係者に「どんな人が亡くなったのか」と聞かれるほど大勢の級友が別れを惜しんだ。今月2日に三春町で行われた葛尾村の成人式では、幼なじみの同級生が遺影を抱いて出席した。
 「友達には息子の分まで生きてほしい。ただ、請戸に行った日が1日でもずれていたら」。裕一さんは同級生に裕紀さんの面影を重ねている。

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