東日本大震災アーカイブ

コメ地産地消へ回帰 県内の学校給食

放射性物質分析器でコメを測定する検査員=福島市の県学校給食会

 県内の市町村が地産地消などのために進めてきた同じ市町村内で収穫されたコメの学校給食使用を、平成24年産から再開する動きが広がっている。11日までの福島民報社の調べでは、23年産の15市町村から、38市町村に増えている。県の全袋検査をはじめ放射性物質に対する検査態勢の充実などを踏まえた対応だが、保護者の慎重意見を背景に、再開に踏み切らない自治体もある。

■何重にも
 9日から学校給食で地元産米使用を再開したばかりの川俣町の川俣小。ランチルームで児童が湯気を立てたご飯をおいしそうに食べていた。
 東京電力福島第一原発事故発生後、町は23年産米から会津産を使ってきたが、検査態勢整備などを理由に地元産米使用を再開した。町関係者は「ようやく以前の学校生活が戻ってきた」と胸をなで下ろす。
 福島市は今月下旬にも市内産米に戻す。県の全袋検査、精米工場での抽出検査、市町村への食材提供などをしている県学校給食会での4回の検査に加え、市独自で2回検査する。
 市は昨年中に全学校に食品の放射性物質分析器の配備を終えており、自校給食の各校では調理前のコメを抽出検査。さらに料理が出来上がってからも、一食分の料理全部を検査し、何重にもわたって安全性をチェックしている。市の野地正栄教育部長は「日本一安全な学校給食を提供する」と力を込めた。

■抵抗感
 保護者の中には学校給食への地元産米使用に抵抗感を持つ人もいる。二本松市は昨年12月に給食に使うコメを市内産米に戻した。小学校に長男が通う女性は「納得できない」と訴える。
 自宅では県外産の食材しか使わない。市は学校給食で使うコメについて、国の基準値の1キロ当たり100ベクレルよりも低い10ベクレルに定めて独自に検査しているが、「それでも不安。本音を言えば、県外産に戻してほしい」と話す。
 市は事前に保護者向け説明会を開き、検査態勢を見学する機会もつくった。しかし、小中学生約4900人のうち100人ほどが給食の米飯を食べず、弁当を持参している。
 放射線防護が専門で県放射線アドバイザーの松田尚樹長崎大教授は「全袋検査で基準値以下であると確認されている。基準値自体がかなり厳しく設定され、毎日、3回食べても健康影響を心配するレベルではない。しかも、ほとんどは基準値を大幅に下回っている」と強調する。
 ただ、「無理やり食べさせることはできない。どうしても食べたくないというケースにも配慮すべき」と指摘した。

■様子見
 西郷村は24年産米も会津産米使用を継続する。「地元産を使いたいが、保護者の気持ちを考えると使えなかった」と村の担当者は打ち明ける。
 県の全袋検査の結果を見て、村内産米の使用再開に踏み切るかどうかを判断するには、検査結果が出そろうのを待つ必要があったという。このため24年産米については入手の手続きが間に合わなかった。
 いわき市も県外産米使用を継続している。保護者の不安に配慮した対応だが、一方で検査態勢の拡充を進めている。今月中に食品の放射性物質分析機の配備を終え、規模の大きい給食センターには2台ずつ、小規模のセンターと、自校で給食を作る学校には1台ずつ稼働させる。検査態勢を整えた上で、市内産米の使用に向け検討に入る方針だ。
 生産者からは地元産米使用の再開を求める声も。伊達市の農家(69)は「安全な食材を作っているのに...。風評被害は根深い。まずは地元で使ってほしい」と切実な訴えを口にした。

■市町村の同一市町村産米の学校給食使用状況
▽23年産米、24年産米とも同一市町村産米使用=郡山、白河、喜多方、田村、本宮、大玉、只見、西会津、金山、昭和、泉崎、中島、鮫川、古殿、三春
▽24年産米から同一市町村産米使用=福島、会津若松、須賀川、二本松、川俣、鏡石、天栄、南会津、磐梯、猪苗代、会津坂下、湯川、柳津、会津美里、矢吹、棚倉、矢祭、塙、石川、玉川、平田、浅川、小野

カテゴリー:3.11大震災・断面