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【川内村帰村宣言から1年】 買い物は?通院は? 村内の施設充実など課題

早期改良が要望されている399号国道=いわき市小川町

 31日で「帰村宣言」から1年を迎える川内村は、東京電力福島第一原発事故による空間放射線量は除染で低減しているものの、事故発生前に村民が買い物や通院などをしていた富岡町などは復興途上。住民の帰村の加速には村内での医療機関や商業施設の充実に加え、いわき市など都市部への道路整備が課題となっている。

■戻れない
 「不便な村ではもう暮らせない」。村から避難し、郡山市の仮設住宅で暮らす通信制高校4年の大山美穂さん(18)は本音を漏らす。
 自宅は福島第一原発から20キロ圏外にあるために住むこともできる。しかし、現在、村では食料品や日用品などを買うためには隣接する田村市まで30分以上かけて行く必要がある。「不自由なく暮らせる郡山市との落差は大きい」と話す。
 郡山市内の別の仮設住宅で避難生活を送る主婦関根香織さん(35)は村内での医療や教育の環境に不安を感じる。夫、小学校と幼稚園に通う子ども2人の4人家族。4月には村での生活再開を考えているが、村内には診療所が1カ所しかなく、高校もないことが悩みだ。「子どもの将来を考えると、村で育てていいのだろうか」と表情を曇らせる。
 一方、村内の除染は一定程度進んでいる。住宅除染は旧緊急時避難準備区域と旧警戒区域を合わせて約1200世帯のうち99%までが終了。大雪の影響で作業が遅れたものの、2月中には完了する見通しだ。村によると、除染を終えた住宅の半数程度は周辺の放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト以下に下がった。ただ、避難を続ける村民の1人は「除染は進んでも放射線量がゼロではない。不安がなくなるわけではない」と指摘した。

■道路改良を
 村は国に対し、いわき市と村を結ぶ399号国道整備を重点的に要望している。村民にとって生活圏だった富岡町や大熊町とは原発事故の影響で往来できない状態が続き、いわき市などへの村民の依存度が高まっているからだ。
 村役場からいわき市平までは40キロ程度の距離だが、峠部分などは道幅が狭く、乗用車が擦れ違えない場所もある。積雪のある冬期間は通行車両がほとんどない。
 避難先のいわき市と、職場のある村を往復しているパート女性(52)は399号国道を使い、1時間程度で通勤しているが、冬場は遠回りをするため、2時間近くかかるという。「圧雪と凍結の道路の運転は怖くてどうしようもない。1日も早い道路の改良を望みたい」と訴えた。

■時間との闘い
 帰村に向けては村内での雇用機会の確保も欠かせない。
 村は、村内下川内に建設が進む野菜工場「川内高原農産物栽培工場」に期待をかける。完全人工光型水耕栽培を取り入れた村内初の施設で、外気を遮断し氷点下が続く厳冬期でも年間を通し野菜が出荷できる。今春の本格稼働を目指し、地元から最大25人の雇用が見込まれる。
 村復興対策課の井出寿一課長(59)は「一時的にでも村を離れた若い世代を呼び戻すには時間との闘い」と強調した。
 原発事故後、村内に進出する企業が相次いだ。村も村内初の特別養護老人ホームを平成26年秋ごろに開設する準備を進めている。現在の雇用は進出企業の製造業中心だが、将来的には福祉やサービス業など幅広く仕事が選べるような態勢づくりを進める。

背景
 川内村は東京電力福島第一原発事故に伴い第一原発から20キロ圏内が警戒区域、20キロ~30キロ圏内が緊急時避難準備区域に設定された。平成23年9月30日、村役場や川内小、川内中などがある緊急時避難準備区域が解除された。24年3月31日に警戒区域が解除され、放射線量に応じて避難指示解除準備と居住制限の両区域に再編された。同年4月1日、村役場機能を避難先の郡山市から村内の庁舎に戻した。

若い世代のため環境整備が重要

■遠藤村長に聞く

 遠藤雄幸村長は30日までに福島民報社のインタビューに応じ、現状や展望などを説明した。
 -「帰村宣言」から1年がたつ。
 「原発事故からの全村避難、そして前例がない『帰村宣言』。古里を取り戻したいという一心で毎日が駆け足のように過ぎた」
 -宣言から2年目の村づくりの考え方を聞きたい。
 「震災と原発事故を機に過疎化の針が一気に何十年も進んでしまったようだ。10年、20年先の村づくりを進めるためには、子どもを持つ若い世代に村の魅力を再認識してもらえるよう、さまざまな環境を整えることが重要だ」
 -今後の対応は。
 「除染やインフラ整備を進めながら『心の復興』にも力を入れる。ゼロではない放射線量とどう向き合うか、最終的な判断は個々に任せざるを得ない。そのための判断材料として村はあらゆる情報を迅速に提供する」

カテゴリー:3.11大震災・断面

「若い世代の帰村のため環境を整えることが重要」と話す遠藤村長

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