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【国策への異議9】原告は全て県内住民 印紙代金めぐり交渉

安田さんが事務所で保管している福島原発訴訟の資料

 昭和50年1月7日午前11時半ごろ、福島市民福祉会館(当時)の1室には熱気があふれた。福島原発訴訟の訴状提出に先立ち、原告と支援者らの決起集会が開かれていた。原告を含む約250人を前に、原告団長の小野田三蔵(75)や弁護団長の安田純治(81)らが壇上に立ち、勝訴までの団結を呼び掛けた。
 午後1時ごろ、安田と小野田ら原告の代表者が福島地裁の民事書記官室を訪れた。東京電力福島第二原発1号炉設置許可の取り消しを国に求める訴状を出した。その字数は約4万字に上った。
 原発設置許可の取り消し請求訴訟は、愛媛県の四国電力伊方原発1号炉、茨城県東海村の日本原子力発電2号炉に次いで3番目だった。

■津波を指摘 
 訴状に名を連ねた原告団は404人。全員がいわき市から新地町までの浜通りの住民だった。「行政訴訟にありがちな、原告の中に県外の活動家が交じることはなかった」。安田は、原告が純粋に原発に不安を抱く地域住民だった福島原発訴訟の特徴を強調する。
 原告は訴状で、政府の審査基準について「地震・津波・航空機墜落などの可能性からみて立地適正の検討は十分でない」と主張した。
 東京電力福島第一原発事故後、東電は原発事故について「津波は想定外だった」としている。安田は「40年近く前の訴状で既に津波の可能性を指摘していた」と話す。

■注文 
 提訴の数日後、安田の事務所に福島地裁の書記官から電話が入った。「原告が1人ずつ、印紙代を払ってください」
 訴訟を起こす際、手数料として訴状に張り付けなければならない印紙。その印紙の代金を原告404人がそれぞれ支払えということだった。安田は驚いた。「そんなはずはない。このような行政訴訟で1人ずつ印紙代を払えなんて言われたことはない」
 安田の記憶によると、福島原発訴訟の印紙代は3300円ほどだった。全員分を計算したところ、百数十万円に上った。「多くの貧しい原告は支払えない」。裁判所から出た予想外の注文に、安田ら弁護団は苦慮し、原告団の人数を絞り込むことすら検討した。
 「個人個人が経済的権利を訴えているケースなら、それぞれ印紙代を支払うのも分かるが、この訴訟には当てはまらないはずだ」。安田は粘り強く裁判所と交渉を続けた。最終的には原告1人1人が印紙代を支払う必要はないと判断され、原告404人で裁判を始めることとなった。安田は「それまで言われたことがなかったことを突然、裁判所が主張してきたので驚いたのを覚えている」と述懐する。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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