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【国策への異議17】難しい専門家選び 司法、どう向き合うか

東京電力福島第一原発事故の影響が記された地図を見る井戸さん

 滋賀県の住民ら約160人は、福井県に立地する関西電力の原発7基の再稼働差し止めを求め、大津地裁に仮処分を申請している。「東京電力福島第一原発事故後、国の安全審査基準の欠陥が明らかになった」ことなどを理由に挙げている。
 審理がほぼ終了し、今春には判断が出される見通しだ。
 弁護団には滋賀県彦根市の弁護士、井戸謙一(58)が加わっている。井戸は福島第一原発事故が起きる5年前の平成18年3月、金沢地裁に勤務していた。石川県の北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めをめぐる訴訟の裁判長を務め、原発の運転差し止めの判決を国内で初めて下した。

■被災者を支援
 退官して弁護士に登録した井戸は当初、原発訴訟に関わることにためらいがあった。
 「福島第一原発事故で国の政策が根本的に変わると思っていた。しかし、どうもそのような状況になりそうもないと感じた」。ここで変わらなければ"第二の福島"が起こりうるのではないか-。そうした思いが新たな活動を始めるきっかけとなった。
 再稼働差し止めを求めている仮処分申請の原告には、本県から大津市に避難している人も加わっている。
 井戸は、関西地方への避難者の賠償問題などにも積極的に対応している。関西地方への避難者が東電への賠償を求めて京都地裁に提訴する相談を受けている。「自主避難者と、福島県内にとどまっている人が同じ被災者なのに分断されている。皆で固まって主張していくべきだ」

■裁判官サポート
 「裁判所に持ち込まれる原発訴訟の件数は、もっと増えるはずだ」。福島第一原発事故後の原発と司法の関わりについて、井戸はそう予測する。
 「かつての原発訴訟では、裁判官をサポートする態勢が不十分だった。特許事件や脱税事件には調査官が加わったり、医療問題では専門委員がいたりするが、原発訴訟には、そのような支援はなかった」と振り返る。
 審理の中で、専門的な知識が必要な場合は、鑑定人を申請できる。ただ、課題もある。井戸は「鑑定人に誰を選ぶかについて、原告と被告の双方が納得する必要がある。しかし、原発問題に詳しい専門家の中で、双方が納得するような鑑定人は、ほとんどいないのではないか。仮に原発訴訟の調査官を配置するのであれば、最高裁が財務省に人員の手当てを要望しなければならないだろう」と説明する。

■躊躇したが...
 井戸は「志賀原発2号機の運転差し止めの判決を下す時は、正直言って、躊躇(ちゅうちょ)したが、気持ちが逃げてしまうと、権威者の発言に寄りかかりがちになる懸念がある。裁判官が自ら判断することから逃げないで、真摯(しんし)に国民の主張に向き合わないと、司法は国民からの信頼をなくす」と語る。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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