太田昭宏国土交通相は9日、東京電力福島第一原発事故に伴う自主避難者の「母子・父子避難」世帯を対象にした高速道路料金の無料化を大型連休前に開始する方針を明らかにした。平成25年度の政府予算成立の遅れで大型連休に間に合わない見通しだったが、地元自治体や対象世帯からの要望が強いことを踏まえて対応する。先月、成立した25年度暫定予算を財源に充て、高速道路会社の減収分を補填(ほてん)する。同日の公明党県復興加速化本部の申し入れに対し答えた。
申し入れは国交省で、冒頭を除き非公開で行われた。復興加速化本部の甚野源次郎本部長(公明党県本部代表)によると、太田氏は「連休前の実施に向けて、復興庁をはじめ関係地方公共団体とスケジュールなど最終的な調整を図りたい」と述べ、無料化措置を今月下旬からの大型連休に間に合わせる考えを伝えたという。
国交省は事業費を数億円規模と見込み、先月、成立した25年度暫定予算の一部を充当する方向で復興庁や財務省などと最終調整している。確保した予算は無料化に伴う減収分の穴埋めとして、東日本高速道路などの高速道路会社に支払う。
早ければ今週末にも、国交省と復興庁が発表する方向だ。
国交省は無料化関連予算を、平成25年度予算案に盛り込んだ。しかし、昨年末の衆院選と政権交代の影響で予算編成が例年より1カ月遅れ、予算成立が連休明けの5月中旬となる見通しになったため、大型連休前の開始が難しくなっていた。
■「全員対象求める」県幹部
大型連休前に無料化が実現する方針が示されたことに、県幹部は「連休中に親子の再会を楽しみにしていた家族が多く、県民にとって喜ばしい」と評価した。
ただ、県は「母子・父子避難」世帯などに限定せず、全ての自主避難者への適用を求めており、幹部は「連休前スタートは第一歩にすぎない。引き続き、自主避難者全員が対象となるよう国に求めていく」と語った。
■市町村の事務増加懸念
国交省によると、対象の世帯が高速道路を無料で通行する場合、避難元の市町村に住民票などの書類を示して証明書の交付を受ける必要がある。
県は証明書発行などの手続きによって、復興事業を抱える市町村の事務量増加が予想されるため「円滑な実施に向け、しっかり準備を整えたい」としている。
(カテゴリー:福島第一原発事故)