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【富岡再編1カ月】 「片付け進まない」 ごみ搬出先なく 防護服着用に戸惑いも

自宅でごみの片付けをする田中さん=23日午前11時ごろ

 富岡町の警戒区域再編から25日で1カ月がたつ。避難指示解除準備と居住制限の両区域は日中の出入りが可能になり、休日になると、町内の町役場連絡所には150人前後が訪れている。ただ、家の片付けをするにも、ごみの回収先が決まらず、町民からは不満の声が漏れる。町の防護服着用の呼び掛けに戸惑う住民も。立ち入りの増加に伴い、犯罪や火災の増加も懸念され、町は独自に地元消防団員をパトロールの非常勤職員として雇用するなど警戒を強めている。

■自宅前に山積み 
 「ごみを回収してもらわないと、家の片付けがはかどらない」
 いわき市に避難している町内本岡の主婦田中マスヨさん(77)は23日、自宅前に山積みされたごみを前にため息をついた。帰還への思いは強い。再編後、自宅を訪れたのは、この日で4度目。ごみ袋を手に、燃える、燃えないごみの分別を続けた。
 町は仮置き場が決まり、国がごみの回収を始めるまで、自宅で保管するよう求めている。環境省は富岡浄化センター付近の津波被災地と深谷地区の国有林を仮置き場の候補地にしているが、用地を所有する住民、林野庁との間でそれぞれ協議が平行線のままだ。
 田中さんは「このままでは、他人の家にごみが捨てられるなどトラブルが起きかねない」と、早急な仮置き場の確保を求めた。

■町のお願い 
 町が避難指示解除準備区域の下郡山集会所に設けた町役場連絡所には日中、職員2人が常駐し、町民に線量計の貸し出しと防護服の配布を行っている。平日でも50人ほどが訪れている。
 いわき市に避難している町内上手岡の遠藤八郎さん(73)は23日、車で集会所に立ち寄り、職員から線量計と防護服を受け取った。自宅屋根の修理のため、3時間ほど屋外で活動する。「自分の身は自分で守らないと」と話し、居住制限区域の自宅に向かった。
 一方、「自由に出入りできるようになったのに、防護服を着る必要があるのか」と配布に戸惑う町民もいる。
 国は帰還困難区域を除き、原則、防護服の着用やスクリーニングを求めないとしている。だが、町が作成した「立入りのしおり」には、居住制限、避難指示解除準備の両区域とも「防護装備の着用をお願いします」と表記されている。郡山市に避難している町内本岡のアルバイト男性(65)は「最近では一時帰宅でも着ていないのに。必要なのか」と首をかしげた。
 防護服は放射線から身を守るためではなく、放射性物質を含む土ぼこりなどが付くのを防ぐ目的がある。町は「できるだけ被ばくを避けるため」としている。
 浪江町は防護服の配布はしていないが、希望者に積算線量計(ガラスバッジ)を配っている。

■24時間態勢 
 町消防団の安藤治団長(64)らは23日午前、消防ポンプ車で富岡二中の前をゆっくりと進んだ。町は、国の「福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業」を活用し、パトロール員として消防団員18人を雇用した。平日の午前7時から午後6時まで3交代で町内全域に目を光らせる。夜間は民間の警備会社に引き継ぎ、24時間態勢を敷いている。
 土曜日と日曜日は、普段、別の仕事をしている消防団員が交代で警戒に当たっている。避難先の郡山市やいわき市などから総勢90人以上が集まり、「町の安全は町民の手で守る」と意気込む。楢葉町の富岡消防署楢葉分署で訓練も行っている。
 再編後、火災は起きていないが、消火栓が使えないことなどから消防団はポンプ車に大型の消火器を積んで対応している。大型連休を前に、安藤団長は「さらに立ち入りが増える。全員で警戒を強めたい」と表情を引き締めた。

【背景】 
 富岡町は3月25日、線量に応じて帰還困難(年間積算放射線量50ミリシーベルト超)と日中に立ち入り可能な居住制限(同20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)、避難指示解除準備(同20ミリシーベルト以下)の3区域に再編された。避難指示解除準備区域にあるガソリンスタンドが事業の再開を予定している。インフラの復旧は、帰還困難区域を除いて、電気が通るようになった。22日までの申し込みは約250世帯。上水道は楢葉町の小山浄水場を供給エリアとする富岡町南部から復旧工事を進める。下水道は津波被害を受けた公共下水道富岡浄化センターの復旧設計をする。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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