東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域の見直しで、全域が警戒区域となっている双葉町の再編は28日午前0時に行われ、福島第一原発から半径20キロ圏内に設定された警戒区域を抱える9市町村の再編が完了する。全体の67%に当たる5万1360人は避難指示解除準備、居住制限両区域の住民として自由に出入りができるようになる。住宅補修など帰還に向けた準備の加速が期待されるが、生活環境の回復にはさらなる除染の推進などが必要だ。
警戒区域に設定された9市町村と、計画的避難区域に設定された飯舘村の区域再編後の人口、面積は【表】の通り。双葉町は避難指示解除準備、帰還困難両区域に再編される。双葉町を含めた9市町村の避難区域合計の人口7万6420人のうち、昼間に製造業などの事業再開が可能な避難指示解除準備区域は3万2130人で全体の42%となる。日中に区域内に出入りはできるが事業再開はできない居住制限区域は1万9230人で25%となる。
両区域を合わせると67%の5万1360人が夜間を除いて区域内に入り、住宅補修や家財の片付けなどの作業に取り組める。さらに道路や上下水道の復旧に向けた調査や施設整備が本格化するなど帰還後の生活環境を整える準備作業も進むとみられる。しかし、9市町村のうち、6市町村に原則立ち入り禁止の帰還困難区域が設けられ、同じ自治体内でも日中に自由に帰宅できる人と、一時帰宅でしか自宅に戻れないなどの差が生じる。国直轄除染や仮置き場の確保などが進んでいないことが課題で、スーパーや医療機関などの再開も住民帰還のためには不可欠だ。
■帰還困難は2万5002人
区域再編後に6市町村に設定される帰還困難区域の人口は2万5002人。大熊町と双葉町は人口の96%が住んでいた地域が帰還困難区域となる。
原発事故で出た放射性物質を含む廃棄物を保管する中間貯蔵施設について、環境省が大熊、双葉両町に示した計8カ所の建設候補地は、いずれも帰還困難区域内にある。今後、建設場所の選定や、国による土地の買い上げなどが議論されるが、一部の住民にとっては住み慣れた土地を手放すという重い決断を迫られる可能性がある。
さらに、環境省は避難区域が設定された11市町村を国が直轄で除染を進める除染特別地域に指定したが、本格除染が始まったのは田村、楢葉、川内、飯舘の4市町村のみ。富岡、双葉の両町は実施計画が未策定で、除染の遅れが指摘されている。住民が帰還できる見通しが立っていない地域が多く、富岡、大熊、双葉、浪江の4町は「町外コミュニティー(仮の町)」構想を掲げている。
原発事故後、避難区域が設定された12市町村のうち、旧緊急時避難準備区域の広野町は23年9月に解除された。計画的避難区域の飯舘村は24年7月に3区域に再編された。再編未実施は、計画的避難区域に設定された川俣町山木屋地区のみ。
(カテゴリー:福島第一原発事故)