東日本大震災アーカイブ

今を生きる 避難者の思い 舞台に 下北沢(東京)で8月公演 被災者支援団体 橋渡し

楢葉町民が避難する仮設住宅の集会所で演技を披露する大沼高演劇部。8月には東京・下北沢での公演が決まった

■大沼高演劇部
 昨年の県高校演劇コンクールで最優秀賞を受賞した会津美里町の大沼高演劇部は8月、演劇文化の発信地として知られる東京・下北沢で公演する。演劇部の公演に感銘を受けた東京の被災者支援団体の橋渡しで実現した。生徒たちは「避難者の思いを作品を通じて伝えたい」と意気込む。支援団体の関係者も「震災と原発事故を風化させてはいけない。多くの人に思いを共感してほしい」と準備を進めている。
 大沼高演劇部が東京公演で演じるのは作品「シュレーディンガーの猫~Our last question~」。東京電力福島第一原発事故で浜通りから会津地方の高校に転校した2人の女子高生と、転校先の同級生がぶつかりながらも心を通わせる姿をリアルに描いた。富岡町から避難していた部員の話を基に、顧問の佐藤雅通教諭(46)が脚本を書き、部員全員で意見を出し合い作り上げ、昨年11月の県大会で最優秀賞に輝いた。
 だが、12月の東北大会では、「内容が重すぎる」「疲れる」など審査員から厳しい評価を受けた。部員は上位入賞を逃したことよりも、共感を得られなかったことが何より悔しかった。
 東京公演の誘いが舞い込んだのは今年3月だった。いわき市で開かれた第7回春季全国高校演劇研究大会で大沼高演劇部の公演を鑑賞した東京の被災者支援団体ウシトラ旅団代表の平田誠剛さん(58)からだった。平田さんは東北大会であまり評価されなかったことを本紙などで知り、東京から駆け付けた。「どうしてみんな共感できなかったのか。多くの人にこの思いを知ってほしい」。居ても立ってもいられず、東京で公演してほしいと、その場で佐藤教諭に掛け合った。
 ウシトラ旅団は東北(丑寅の方角)の人を支援しようと、東京の50歳代を中心とする製造業やデザイナー、メディア関係者ら約30人で結成した。東日本大震災と原発事故後、本県入りし、いわき市の仮設住宅で富岡町の避難者らを支援してきた。
 「やるなら演劇文化の発信地の下北沢で」。劇団「東京キッドブラザース」に所属していたメンバーもおり、東京都世田谷区北沢の「小劇場 楽園」での上演が決まった。期間は8月15日から18日で、公演回数や時間などは今後、詰める。費用は入場料と寄付金などで賄う予定だ。
 部長の田口準君(17)=3年=は「避難している人の苦渋の思い、被災者同士のあつれきや温度差、負けないで前を向いていく姿を表現したい」と話す。避難してきた転校生役を演じる副部長の増井結菜さん(17)=同=も「私たちにしかできない演技がある。福島の思いを伝えたい」と誓う。
 「生徒さんの思いは、自分たちが伝えたかったことと重なった。多くの人に見て、触れてほしい」とエールを送る平田さん。佐藤教諭は「生徒は劇を通じ、悩みながらも成長した。東京公演も大きな経験になるはず」と信じている。
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 ウシトラ旅団では、東京公演に向け、ボランティアと寄付金を募っている。
 問い合わせは平田さん 電話090(3961)0337、事務局のメールアドレス contact@ushitora-ryodan.orgへ。

■美里の仮設住宅で披露 拍手やまず
 大沼高演劇部は8日夜、楢葉町民が避難する会津美里町の宮里仮設住宅で演劇を披露した。避難者を前にした初めての公演となったが、住民らの共感を呼び、終了後は拍手がやまなかった。
 会場となったのは仮設住宅内の集会所。子どもからお年寄りまでの60人以上が詰め掛け、立ち見が出るほどだった。小さな集会所に合わせ演技を変えたが、迫真の演技にハンカチで顔を覆う人やすすり泣く人の姿も見られた。
 会場を訪れた蛭田マチ子さん(70)は「孫に誘われて来てみた。つらい気持ちなど伝えてくれた。とても感動的だった」と涙ぐんでいた。二瓶克晃君(17)=3年=は「練習の成果を出し切ることができた。何100人も入る体育館より、拍手が大きく温かかった」と話した。

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