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父の船 兄弟で守る 元漁業者団体会長の兄、狩猟が趣味の弟

■いわき市四倉町 大河原喜平さん(84) 仁三郎さん(75)
 喜平さんと弟の仁三郎さんは、父・二郎さん(故人)から受け継いだ漁船「金比羅丸」に兄弟で乗り、いわき市の四倉港を拠点に近海で漁をした。かつてはカツオの一本釣り、近年はコウナゴやシラス、ホッキ貝などを網で取り生計を立てていた。「体の続く限りは漁を続ける」。2人の口癖だった。
 ともに海から数100メートル離れた場所に自宅があった。震災当日は船を陸に揚げ、仁三郎さんが修理していた。喜平さんは自宅で大きな揺れを感じた。心配になり、仁三郎さんのいる港に急いだ。波に流されないようロープで船を固定している2人の姿を漁協関係者が目撃している。
 家族は2人の携帯電話に何度も電話した。夜になっても2人は帰宅しなかった。深夜、仁三郎さんの妻・清子さん(75)と、近くに住む仁三郎さんの長女・美香さん(48)、美香さんの次男・大地さん(23)は港に向かった。沿岸部が大津波に襲われたことは知っていた。余震が続き、高波が打ち寄せたが捜し続けた。しばらくして懐中電灯の光の中、港のそばを通る6号国道付近に倒れていた喜平さんと仁三郎さんを見つけた。津波に襲われたとみられている。
 喜平さんは、いわき地区船曳網漁業連絡協議会や県オキアミ曳網漁業者連絡協議会の会長などを歴任した。平成9年には市水産業功労者として市長表彰状を受けている。神社仏閣が好きで、地元にある神社の総代を務めた。みこしが町内を練り歩く5月の例大祭を楽しみにしていた。
 仁三郎さんは狩猟が趣味で、近所の山でキジや山鳥を狙った。山に入った時は山菜やキノコをたくさん採ってきた。食卓にマツタケが並んだこともある。取れたての魚や山菜を大地さんらがおいしそうに食べると、仁三郎さんはうれしそうな顔をしていたという。
 喜平さんと同居していた次女・根本きよ子さん(54)は「受け継いだ大切な船を守りたかったのでしょう」と想像する。清子さんは「(仁三郎さんは)厳しい人だったが、何事にも一生懸命で優しかった」と連れ添った日々に思いを巡らせた。
 2人が守ろうとした「金比羅丸」は流されずに四倉港で見つかった。現在、「道の駅よつくら港」近くに他の船と一緒に置かれている。

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