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【避難区域の復旧】 生活用水の確保急務 県、地下水活用へ 住民帰還促す環境整備

 東京電力福島第一原発事故の避難区域再編により日中の立ち入りが可能となった避難指示解除準備、居住制限区域では、生活用水の確保が住民帰還への課題となっている。再編から1年余が経過した南相馬市小高区は上水道復旧が進まず、住民の多くは水を持ち込む。旧警戒区域の富岡、大熊、双葉、浪江の4町の復旧もほとんど手付かずで、住民帰還の足かせになりかねない状況だ。県は避難区域の生活用水確保策として地下水に着目した。今夏から地下水の水量調査、放射性物質検査に乗り出す。

■進まない
 平成24年4月16日に避難指示解除準備区域などに再編された南相馬市小高区。上水道は東日本大震災で損壊し、復旧率は38%にとどまる。漏水場所の確認などに時間を要するため、完全復旧の見通しは立たない。
 小高区役所に唯一設置された給水所で水をくんだり、ペットボトルを持参したりする住民が目立つ。「井戸はあるけど、放射性物質の不安を拭い切れないんだ」。街中の自宅に帰っていた60代の女性はつぶやいた。
 再編から8月で1年になる楢葉町は上水道本管の大半が復旧した。しかし、除染が計画通りに進まない町内で、飲料水として使う住民は少ない。

■需要と供給
 旧警戒区域の富岡、大熊、双葉、浪江の4町(双葉町を除き再編済み)は比較的放射線量が高いため、災害査定が大幅に遅れた。
 再編から2カ月を迎えようとする富岡町と浪江町は、人口の7~8割が避難指示解除、居住制限区域に当たる。今後、住民の立ち入りが本格化するとみられるが、生活用水確保のめどは立たない。富岡町の担当者は「夏場を迎えれば飲料水の需要が増える。掃除にも大量の水が必要だ」と頭を悩ます。

■安心確保
 県は生活用水の確保に向け、旧警戒区域をはじめ、中、浜通りの計200カ所で地下水の水量調査と放射性物質検査を実施する。6月県議会に調査・検査費約2000万円を計上する方向で調整している。
 既存の井戸を活用した水位調査や地質資料の解析などで地下水脈の規模を把握する。水量や水質を市町村や民間事業者、住民と共有し、地下水の利活用に役立てるという。
 旧警戒区域の地下水は、これまで詳細な放射性物質調査をほとんど実施していない。「地下水は放射性物質の影響を受けにくく、一部調査でも検出されていない。ただ、風評や不安は根強い」。県の担当者は、こう指摘した。調査によって安全性を確認し、風評や不安を払拭(ふっしょく)したい考えだ。
 安全な地下水の確保は事業再開や産業集積の後押し、災害時の給水態勢の確立という側面もある。
 町外コミュニティー(仮の町)の整備、南相馬市や川内村で始まった野菜工場、郡山市などで進む再生可能エネルギーと医療関連産業の集積にも地下水脈を生かすという。

【背景】
 避難区域がある11市町村のうち、28日の双葉町で10市町村の再編が完了する。日中に立ち入りが可能な避難指示解除、居住制限両区域の人口は、10市町村の避難区域全体の人口の約7割に相当する5万7420人。放射線量が比較的高く、立ち入りが制限された旧警戒区域では社会基盤の復旧、除染が遅れている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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