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自慢のモモ"新鮮力"に 新品種「夏の陽」認定 県産の風評打開へ期待

新品種認定を受けた「夏の陽」の摘果作業をする高橋さん

■月舘の果樹農家 高橋忠吉さん(64)
 伊達市月舘町で高橋もも園を営む高橋忠吉さん(64)が開発したモモ「夏の陽(よう)」が農林水産省から新品種の認定を受けた。東京電力福島第一原発事故により、本県農産物への風評被害は依然、根強い。新品種は本県モモの主力「あかつき」が品薄になる8月のお盆前後が最盛期で、新たなブランドとして期待が膨らむ。「全国に福島のおいしいモモを認めさせる」。固く誓い、逆境に立ち向かう。
 40年以上にわたりモモの生産を手掛けてきた。畑は約1・5ヘクタール。よりおいしいモモを求め、約20年前から品種改良に取り組んできた。これまで「てまり姫」「きらら姫」「優香の夢」など8種類が新品種として登録を受けた。
 「夏の陽」は「西野白桃」の自然交雑から育成した。十数年をかけ、ほぼ理想の味と大きさになった。平成23年3月の東日本大震災と原発事故発生時は、新品種登録に向けた国の審査中だった。
 この年、天候に恵まれ出来は最高だったが、風評被害で震災前の半値でしか売れず、悔しさが込み上げた。昨年の販売価格も震災前の8割にとどまった。
 原発事故により、本県農業は大きな打撃を受けた。多くの農家が苦しい経営状況にあえぎ、打開策を見いだせずにいた。「福島はこれまで『あかつき』に頼り切っていた。新しい品種でこの苦境を乗り越えなければ」。「夏の陽」が新品種に登録される日を待ち焦がれた。
 今年3月、ようやく新品種を示す種苗法品種登録証が届いた。この認定により、ブランド力が高まり、多くの農家への普及が期待されるという。
 「夏の陽」は250~300グラムの中玉。糖度は13~14度と「あかつき」を上回る。無袋栽培だが裂果はなく、生育が容易なのが特長。成熟期は8月中旬で「あかつき」より1週間遅く、需要のピークとなる時期に高品質のモモを出荷できるメリットがある。
 「震災前よりもレベルが上がった福島のモモを市場は、きっと受け入れてくれる。需要増につながるはず」。震災と原発事故の苦境をはね返すことを誓う。今夏、復興への思いが詰まった果実が実る。
    ◇   ◇
 「夏の陽」の新品種登録には県育種研究会などが協力した。研究会の鈴木継明さん(74)は「風評被害に苦しむ福島のモモをPRする上で、救世主になり得る素晴らしい品種だ」と太鼓判を押した。

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