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新たな陶芸人生 西郷で 大堀相馬焼の窯を準備

避難先で人形を作る京子さん(右)を見守る和生さん

■浪江から那須に避難 松永 和生さん(64)京子さん(61)夫婦

 栃木県那須町で避難生活を送る大堀相馬焼の松永窯の松永和生さん(64)と京子さん(61)夫婦は、西郷村に新たな作業場を設ける準備を進めている。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で古里の浪江町を遠く離れ2年3カ月。「陶芸人生をこのままで終わらせたくない」と本格的な作業再開を決意した。
 和生さんは松永窯の3代目。結婚以降、和生さんは日用品などの陶器に、京子さんは人形などの創作陶芸に二人三脚で仕事を続けてきた。震災で現在地に避難してからは和生さんは二本松市を訪れ、市内にある大堀相馬焼協同組合に置かれた窯などを借りて、ほそぼそと作陶を続けてきた。しかし、自分のものでない窯を使うたび、陶芸家として歯がゆい思いを味わうことがしばしばだった。慣れ親しんだ浪江町を離れた京子さんも思いは同じだった。
 そんな折、今年になって和生さんの知人から、那須町からほど近い西郷村に工房として使えそうな廃業状態の工場を見つけたとの連絡が入った。同じ時期、作品をかき集めて大震災後初めてとなる陶器展を白河市で開いたところ、県内各地からなじみの客が次々と訪れた。懐かしい顔から温かな励ましを受け、2人はもう1度自分たちの窯を持ち作陶を再開することを決意した。
 2人は工場を借り受けることで話をまとめた。現在は作業環境を整備するため、経済産業省の伝統的工芸品産業振興対策支援補助金に申請する手続きを進めている。電気とガスの2種類の窯を設ける予定で、手続きが順調に進めば9月ごろには新たな工房で作陶活動を始めるという。当面は那須町に居住しながら西郷村で作業を続ける予定だ。
 先行きは不透明だが2人は「覚悟」を決めているという。「浪江町にいたころのように生計を立てるのは難しいだろう。それでも自分には焼き物しかないから、とにかく始める」と和生さんは明るく言い切る。京子さんも「古くからの知り合いからの『再開してほしい』という声に、ようやく応えることができます」と人形作りの手を休めてつぶやいた。

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