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(32)命の重さ 弔慰金 行政の対応 長期避難増える申請 認定作業は市町村任せ

災害弔慰金の申し出や相談を受け付ける南相馬市の窓口。社会福祉課の職員が対応に当たる

 南相馬市は東京電力福島第一原発事故によって、南部が警戒区域などの避難区域となった。
 避難区域の再編から1年2カ月となった今年6月上旬。本来であれば相馬野馬追を控え、活気にあふれている時期だ。人影まばらな小高区は原発事故の影響を特に色濃く残す。
 原町区の市役所東庁舎1階にある社会福祉課。事故直後から災害関連死の認定手続き、災害弔慰金の支払い業務を続けてきた。市内は沿岸部のほとんどが津波に襲われ、多くの犠牲者を出した。当初は「直接死」の支給業務が大部分を占めた。
 累計は20日までに1000件を超える。時間の経過とともに、原発事故による避難中の死が増えていった。
 「避難の経過をできるだけ詳しく記入してください」。社会福祉係長の丸山光清さん(47)は、窓口のテーブルを挟み遺族と向き合う。持ち込まれた書類に目を通し助言する。不安を与えないよう穏やかな対応を心掛けているが、表情に時折、疲労の色が浮かぶ。
 記入漏れがないか、専門家による審査委員会で適切な判断材料になり得るか...。災害弔慰金の支給対象となるのかどうかは、市が設けた審査委員会が書類を基に判断するためだ。ただ、毎日のように住民の「死への道程」をたどる作業は、担当する職員の心に重い負担としてのしかかる。経緯を記入する欄は全て「3・11」から始まる。脳裏に刻み込まれた原発事故直後の苦しい記憶がよみがえる。「職員自身も被災している。あの日から前に進めない」
 昨年4月の区域再編で、ほとんどは日中の立ち入りが可能な避難指示解除準備区域、居住制限区域になった。しかし、区域内の約1万4000人に加え、隣接する原町区などからも放射性物質の影響を懸念し、約6000人が県内外に移った。
 相談や弔慰金の申し出は住民の避難生活が続く限り、終わりがない。一方で事故発生から時間が経過するにつれ、避難と死亡との因果関係は確認しにくくなる。丸山さんは今後、関連死と認められないケースが増えてくる可能性が高いとみる。
 市は災害関連死の認定受け付けに期限を設けていない。「不認定が相次げば、行政への不信感につながりかねない」。ゆくゆくは打ち切り時期を明確にすることが、住民の混乱を防ぐ上でも重要だと考えている。
 災害関連死の認定に翻弄(ほんろう)される市町村を前に、国は静観を続ける。怒りと不満が口をついて出た。「弔慰金申し出の終期を含めた制度設計に、国はなぜ責任を持たない」
 国策として推進してきた原発が事故を起こした。国の指示で避難を余儀なくされた住民が死を遂げる。遺族は悲しみの中、生活再建もままならない。
 多くの市町村にまたがる大災害にもかかわらず、全て市町村任せとなっている現状を憂える。

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