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(33)命の重さ 弔慰金 行政の対応 認定審査で意見衝突 因果関係の見極め困難に

ある自治体が審査委員会の開催に使っている会議室。原発事故による避難と死因との因果関係の見極めは時間がたつにつれ難しくなっている

 県内のある自治体の審査委員の男性弁護士は今年6月上旬、遺族が提出した書類の内容を思い起こし、重い口を開いた。「情報が足りないんだ。判断が難しくなっている」。東京電力福島第一原発事故後、自治体から審査委員になるよう要請された。「地元に密着した法律の専門家として当然の責務」。そう考え、委嘱を受けた。2年近くが過ぎた今も、弔慰金の申し出は減ることがない。
 市町村が設ける審査委員会は原発事故の長期避難中の死が災害関連死かどうかを判断する。死と原発事故による避難との因果関係。時の経過とともに、見極めは困難さを増す。認定が得られなければ、遺族は最大500万円の弔慰金を受け取ることができない。
 審査委員会が扱う申し出書類は、既往歴や避難の状況、死亡するまでの経過が記されている。医師による死亡診断書も含まれる。原発事故後間もなくは事故から比較的短い期間で亡くなった住民遺族からの申し出が中心だった。作業はほぼ順調に進んだ。原発事故の発生後の医療・介護施設の閉鎖、医薬品や医療機器の不足、度重なる避難による肉体的負担...。肺炎や心疾患などの死因と関連付けるのは難しくなかった。
 原発事故後2年を過ぎると、事故から1年半余りたってから亡くなったケースの申し出を審査する機会が増えてきた。「避難が死期を早めたかどうか」。原発事故の収束は先が見えない。多くの人が古里に帰れない状態が続く。長期避難による影響の見極めに悩むことが多くなった。今後の判断はより難しくなっていく。
 弁護士が審査委員を務める自治体は、関連死として認定するかどうかの判断基準を詳細に定めていない。個別の事例ごとに、「完全非公開」で、委員の「全会一致」を原則に判断する。
 だが、医学的な立場から述べる医師の審査委員らと見解が異なり、意見がぶつかることもあるという。認定の判断が先送りされる事例も少なくない。住民の「死に至る過程」をひもとき続ける作業は、委員にとって重い負担となっている。「遺族に弔慰金が出るよう、何とか因果関係を見いだしたいのだが...」
 自治体からは避難が長期化する中で、認定の「終期」を求める声が出てきている。因果関係が希薄とされる事例が増えてきているためだ。審査委員会の事務局を担当する自治体職員の1人は「永遠に認定は続いていくのだろうか。被災地の職員が『受け付け終了です』と言えるわけがない」と苦悩する。
 審査委員を務める弁護士はこうした動きに反発し、認定作業を継続する意義を主張する。「避難住民は皆、古里を追われたストレスを常に抱えている。無念の死を遂げた被災者に行政が見舞いの意を示すのが弔慰金。途中放棄はあり得ない」

カテゴリー:原発事故関連死

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