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バラ栽培、癒やし提供 専門店再建 夢が生きる力に

再開した店舗でバラの手入れをする大内茂さん

■原町のローズショップ美・Moe代表 大内茂さん(54)

 赤、白、ピンク、オレンジ...。色とりどりに咲き誇るバラは梅雨に入り、香りを一層豊かにしている。南相馬市原町区上渋佐の「ローズショップ 美・Moe(み・もえ)」は500種2000鉢を扱う県内最大規模のバラ専門店だ。「夢があるから生きていける」。東日本大震災の津波で被災した店を再建した代表の大内茂さん(54)は力を込める。
 小高工高を卒業後、旧国鉄に就職し仙台駅で列車の整備などに携わった。長男だったため、父親定夫さん(84)が営む造園業「杜松園」を継ごうと退職。父親の元で庭造りの基礎を身に付けた。平成元年に定夫さんが引退し、2代目として植木職人を率いた。
 創意を凝らした庭造りは次第に評判を呼び、得意客を増やした。中でも、庭にバラを求める客が多かった。気軽に好みのバラを手に入れられる店が欲しいとの声に応え、21年、原町区の自宅近くに専門店をオープンした。新潟県の花卉(かき)農家から仕入れる高品質のバラは好評で、多くの愛好家が訪れた。
 なじみの客が増えてきたが、震災が発生した。散らかった店内を片付けていると、知り合いが「津波が来るから逃げて」と叫んだ。海岸から2キロほどの店まで津波が来るのか半信半疑だったが、避難のため車に乗り込むとすぐ近くに波が見えた。店と自宅は全壊、造園の庭木やトラックは流失した。東京電力福島第一原発事故が起き、福島市の借り上げ住宅や南相馬市鹿島区の仮設住宅に避難した。
 不便な避難生活が続く中、1日も早く店を再開させようと奔走した。開店資金を何とか工面し、店舗事務所は自ら建てた。備品は知人から譲り受けた。今年5月末、建て直した自宅の敷地内で店を再開させた。
 震災前の約2倍に当たる1日80人ほどの客が足を運び、穏やかな表情でバラに見入る。「震災と原発事故で人々は不安な気持ちを抱き、癒やしを求めている。できることで地域に恩返しができたらうれしい。いつか店の近くにバラ園を造るのが今の夢」とかれんな花に思いを託す。

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