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福島の安全発信 この土地で作り続ける 認証「JGAP」最多取得

観光客にモモの収穫の仕方を教える佐藤さん(左)

■まるせい果樹園(福島) 佐藤ゆきえさん(42)

 福島市飯坂町の「まるせい果樹園」は、食の安全確保などに取り組む農場に与えられる国内の認証「JGAP」を取得した。モモ、リンゴ、ナシなど7品目の栽培農場の認証で、品目数では全国の取得286個人・団体で最多だ。果樹園に嫁いだ佐藤ゆきえさん(42)は、東京電力福島第一原発事故による風評被害と闘う中で、消費者との信頼関係をより強固にする必要性を痛感した。自ら勉強を重ね、厳しい審査に合格した。福島の農産品の安全・安心を発信し、果物王国の再生を目指す。
 モモの最盛期を迎えている30日、「まるせい果樹園」は盛岡市や水戸市からモモ狩りに訪れた団体客でにぎわった。「やっぱり福島のモモが1番だね」。お客から声を掛けられ、佐藤さんは「頑張ってきたことに間違いはなかった」と手応えを感じた。
 夫で社長の清一さん(43)と、7・5ヘクタールの果樹園を切り盛りする。観光客向けに特化し、経営は順調だった。しかし、平成23年の原発事故後、風評被害で団体客は途絶えた。23年度の売り上げは例年の3~4割に落ち込んだ。「おいしいけど、贈答用には使えない」。常連客から言われた。
 売り上げの減少を挽回するため、首都圏などで開かれる復興イベントに毎週のように果物を持って出掛けた。ストレスと疲労から、出張先で倒れ、救急車で病院に運ばれたこともあった。
 果樹園内の除染を進め、自主検査を徹底した。しかし、お客に安全性が十分伝わらない。長い時間をかけて築き上げた消費者との信頼関係をつくり直さなければならなかった。
 安全性を証明できる「JGAP」の存在を知った。現状を打破したいという一心で、多くの審査基準を学んだ。120にも上るチェック項目に基づき果樹園の経営を洗い直し、及ばない点を1つ1つ改善した。
 認証審査は、農薬や肥料の使用記録の帳簿などを細部までチェックされる。改善を命じられる項目もあり、昨年11月に始まった検査は、今年5月まで続いた。6月中旬にモモ、リンゴ、ナシ、ブルーベリー、サクランボ、ブドウ、カキの7品目の農場の認証に合格すると、早速顧客向けのダイレクトメールや、チラシなどで周知した。審査の厳しさを知る客から称賛の電話が入るなど反響は大きかった。
 今年に入って果樹園には徐々に観光客が戻り始めている。ただ、売り上げは震災前の7割程度にとどまる。「この土地でしかできないおいしい果物を作り続け、みんなに喜んでもらいたい」。諦めずに根気強く努力を重ねれば、活路は開けると信じている。

※JGAP NPO法人・日本GAP協会が平成18年から運営している認証制度。消費者やバイヤーが安心して購入・取引できる農場の基準として、農薬や肥料の使用、水、土壌の管理などの項目を第三者審査機関でチェックする。認証は2年更新で、現在、県内でまるせい果樹園のほか、会津坂下町の会津みずほ農場が水田の認証を受けている。

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