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【避難準備区域 解除2年(上)】 帰還5市町村ばらつき 病院、商店なく不便 放射性物質の不安消えず

 東京電力福島第一原発事故を受け、半径20~30キロ圏内の5市町村に設定された緊急時避難準備区域が解除され、30日で2年となる。南相馬市の旧区域は東日本大震災前の人口の7割が戻っているのに対し、田村市は5割、広野、川内両町村は2割にとどまる。楢葉町の帰還も進んでいない。不便な日常生活や放射性物質への不安を背景に、市町村によって住民帰還の状況にばらつきが出ている。

■7割~2割
 南相馬市は原町、鹿島両区の一部が緊急時避難準備区域に設定された。同区域の東日本大震災前の人口は約4万6700人で、7割の3万3100人が戻った。
 市によると、医療機能の回復が、帰還する住民の安心感につながっているという。市立総合病院は、県内外からの応援で、医師数が震災前の14人から23人に増加した。正職員の看護師は現在107人で、震災前の9割に回復した。
 田村市の同区域には震災前、約4100人が居住していたが、現在は約2200人となっている。町全域が同区域となった広野町の現在の居住者は1150人で、全町民約5200人の2割にとどまる。町は「居住者がこの1年で2倍になった」とするが、帰還の動きが鈍い状況が続く。川内村の同区域は震災前の約2440人に対し、完全に帰還した人は505人。「(帰還したのは)65歳以上の住民が多く、高齢化・過疎化が加速している」。村職員は頭を悩ませる。
 楢葉町の同区域の人口は約50人。町内の大半が避難区域となっており、町内の生活環境が整っていないため帰還は進んでいない。

■二地域居住も
 広野町では唯一のスーパーが休止し、多くの個人商店は週数回の営業だ。一方、同町から3300人が避難する、いわき市は買い物や通院、通学など、あらゆる面で便利な生活を送ることができる。町は「いわき市の仮設・借り上げ住宅を生活拠点とし、時折自宅に戻る『二地域居住』の町民が多い」とみる。
 郡山市に設けられた仮設住宅。川内村を離れ避難生活を送る60代の主婦は「(仮設住宅にいた方が)通院が楽で助かる」と暮らしぶりを語る。
 村にはスーパーや高校、病院がない。生活する上で頼りとなっていた富岡町は避難区域のままだ。「仮設住宅を引っ越すことはできない」と打ち明けた。
 田村市で同区域の大半を占める都路地区も商業施設が少なく、市は仮設商業施設整備、コンビニエンスストア誘致を検討している。

■除染と汚染水
 事故を起こした福島第一原発から半径30キロ圏内という精神的な不安、放射性物質への心配も帰還を阻む要因の一つだ。
 広野町は住宅の97%で除染を終え、放射線量も全体的に低い。しかし、町職員は「行政懇談会では必ず線量への懸念が持ち上がる。裏山など局所的に線量が高い場所は再除染しているが、住民の不安は消えない」と話す。
 精神的損害賠償は大人が昨年8月、高校生以下が今年3月で終了。二地域居住をする住民には交通費などの費用が負担としてのしかかる。それでも、第一原発の存在が住民の帰還を鈍らせる。複数の町民は「線量が低いから帰れるだろうと言われても、今も原発への恐れはある。相次ぐ汚染水漏えいのせいで、さらに不安を感じる」と口をそろえる。
 川内村は森林除染が進んでいない。山林全体の効果的な除染方法は確立されておらず、村は森林除染の手詰まりが、住民の帰還に影響すると懸念している。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故に伴い、政府は平成23年4月22日、原発から半径20~30キロ圏内の5市町村に自主的な避難を求める地域として緊急時避難準備区域を設定した。広野町全域と田村、南相馬、楢葉、川内の4市町村の一部が対象となった。原発事故前の区域内の住民は計約5万8900人。現在、戻った住民は当時の約63%に相当する約3万6900人だ。
 第一原発から20キロ圏内は警戒区域、その外側で放射線量が高い地域は計画的避難区域に設定された。両区域の11市町村は24年4月から今年8月にかけて線量に応じて帰還困難、居住制限、避難指示解除準備の各区域に再編された。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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