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【避難準備区域 解除2年(下)】 賠償方針に不満 地元の訴え通らず 早期帰還や田畑めぐり

 30日、区域設定解除から2年を迎えた東京電力福島第一原発事故に伴う旧緊急時避難準備区域内で、政府の損害賠償の方針に対し住民が不満を募らせている。地元自治体は、生活支援に向け早期帰還者を新たに設けられる賠償の対象とするよう求めている。住民が自宅に戻る環境を整えるためだが、政府は考えを明確にしていない。一方、政府は旧避難準備区域を田畑賠償の対象外とする考えを変えておらず、地元との協議は平行線をたどっている。

■不透明
 政府は今年3月公表の「早期帰還・定住プラン」に、今後指定が解除される避難指示解除準備区域の早期帰還者向けに新たな賠償を検討する考えを盛り込んだ。インフラ復旧が不十分な中で生活する不便さを損害と見なし、賠償額を決めることなどを想定している。
 これに対し、県をはじめ、県内の市町村・団体でつくる県原子力損害対策協議会(会長・佐藤雄平知事)は、旧避難準備区域の住民も新たな賠償の対象とするよう政府に要望している。福島第一原発から30キロ圏内で、事故前より空間放射線量が高くなった地域に暮らす不安が賠償に値するとの考えからだ。
 解除準備区域と旧避難準備区域を抱える川内村の遠藤雄幸村長は政府に、両区域に対し同じ対応を取るよう願う。「賠償の内容が異なれば、住民感情が複雑になってしまう」と訴える。
 経済産業省資源エネルギー庁原子力損害対応室は新たな賠償について、「対象となる損害や対象者を含め、現在検討している段階」とし、旧避難準備区域を対象に含めるかどうか明らかにしていない。
 早ければ11月にも、田村市都路町の解除準備区域指定が解かれる見込みとなった。これに合わせて、政府は賠償の方針を示すとみられるが、内容次第で関係自治体から強い反発が出る可能性もある。

■対象外
 田畑賠償の請求受け付けは11月になる見通し。政府は「市場価値の損失・減少分はない」として、旧避難準備区域を対象外とする方針を関係市町村に伝えた。地元自治体や農家は「放射能の汚染で農地としての価値が下がったのは明らか」として、旧警戒区域と同様に賠償金を支払うよう求めている。
 川内村の秋元美誉(よしたか)さん(69)は一昨年から、村内でコメの試験作付けに取り組んできた。栽培方法に工夫を凝らし、放射性物質が検出限界値未満であることを実証して営農再開にこぎ着けた。「原発事故の影響は、川内村も旧警戒区域も変わらないはずだ」と、国の姿勢に疑問を投げ掛けている。

■支援
 旧避難準備区域に住民が戻って生活するためには、商業施設や医療機関の再開が不可欠だ。関係者からは、事業者に対する行政の支援が不可欠だとする声も出ている。
 南相馬市では復興需要に伴い、建設業やサービス業などで人手不足が発生している。40代の自営業男性は「人材確保で行政の支援があればありがたい」と期待する。
 一方、依然として県内の仮設住宅や借り上げ住宅などで生活している旧避難準備区域の住民も多い。1人当たり月額10万円の精神的賠償は昨年8月に打ち切りとなった。給与の減額分を補填(ほてん)する就労不能賠償は12月で終了した。生計を立てるため避難先で就業した人がいるが、避難前と同等の収入を得ることは難しいケースもあるとみられる。このため、避難者の生活再建が実現するまで賠償を継続すべきとの指摘もある。
 鈴木淳一県原子力損害対策担当理事は「被災者1人1人の状況に応じたきめ細かい賠償制度が必要」としている。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故による旧緊急時避難準備区域の住民に対して支払われてきた1人当たり月額10万円の精神的損害賠償は、昨年8月で終了した。ただ、翌月から今年3月までの生活費や通院費などの一部として大人は20万円、高校生以下は35万円がそれぞれ一律支給された。旧警戒区域と旧計画的避難区域の住民に対する精神的賠償は現在も継続している。金額は旧避難準備区域と同額。
 財物賠償のうち、宅地・建物・家財については旧警戒区域と旧計画的避難区域のみが対象で、旧避難準備区域は対象外となった。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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