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【県の改修事業】 住宅耐震化補助に格差 46市町村活用できず 復興優先、財源確保が課題

 古い木造住宅の耐震化を進めるため、県が今年度、創設した耐震改修補助事業を46市町村の住民が活用できずにいる。補助金の一部を負担する市町村が補助制度を設けていないためだ。復興事業優先の市町村が多く、財源確保に加え、手続きを担う職員不足などが背景にある。市町村間で格差が生じる事態に、県民からは「不公平では」との声も上がる。東日本大震災から11日で2年7カ月。県民の防災意識は高まったが、制度面の課題が浮き彫りになっている。

■鈍い反応
 県の耐震改修事業の対象は、建築基準法の改正で新耐震基準が設けられた昭和56年5月末以前に着工した住宅で、診断の結果、耐震診断を満たさない住宅を改修する際の費用を補助する。
 国が改修費用の4分の1、県と市町村がそれぞれ8分の1を補助し、建物所有者が残り2分の1を負担する仕組みだ。補助額は最大100万円。一般的な木造住宅の改修費用は150万~200万円とされる。
 補助を受けるには、市町村が補助制度を設け、財源措置することが条件となっている。しかし、県によると、制度を設けているのは福島、二本松、伊達、桑折、川俣、大玉、郡山、須賀川、石川、喜多方、相馬、新地、楢葉の13市町村にとどまっている。いわき市は国の財源を活用し、市独自に同様の補助制度を設けている。
 県は今年度、改修補助費として2750万円を予算化した。13市町村で67戸(4日現在)が補助対象となったが、予算の執行額は半分程度だ。県建築指導課は「予想外に市町村の反応が鈍い」としている。

■温度差
 県は補助制度が浸透しない背景として、市町村間で耐震化への温度差があることや、民間住宅の耐震化は後回しされる傾向にあることなどを挙げている。
 補助制度を設けていない南相馬市は、津波被災地などの生活基盤の復旧、住民帰還に向けた取り組みなどの対応に多くの予算と職員がつぎ込まれているのが実情だ。建築住宅課の担当者は「民間住宅の耐震化はどうしても後回しにならざるを得ない」と打ち明ける。
 一方、多くの住宅に被害が出た相馬市は10月から補助事業を開始した。担当者は「再び大地震が起きれば、古い住宅は倒壊する可能性がある。人命を守る観点から耐震改修は必要」と話している。

■不公平
 県民からは不公平感を懸念する声も出ている。
 国見町の女性(65)は震災で築30年ほどの自宅が一部損壊した。応急工事を施し、生活を続けているが、再び、大きな地震が起きないか不安が付きまとう。「耐震改修を考えているが、補助金がないと負担が大きい。市町村間で利用の有無に差があるのは不公平」と不満を口にする。
 県建築指導課の但野広課長は「人命確保はもちろん、住宅が倒壊すると避難者の救援活動に支障が出かねない。耐震化の必要性を訴えていきたい」と話す。県は市町村の平成26年度当初予算の編成作業を前に、制度を設けていない市町村に対し、補助制度の創設を促す考えだ。

【背景】
 東日本大震災では、県内で2万1190戸が全壊、7万3021戸が半壊、16万6758戸が一部損壊した。総務省の住宅・土地統計調査(平成20年)によると、県内の木造住宅約55万戸のうち、旧耐震診断の昭和56年5月末以前着工の建物は約20万戸。耐震診断を実施したのは約3800戸で、このうち耐震性が確保されていたのは約2600戸にとどまっている。県は今年度スタートした県土づくりプランで、住宅の耐震化率を20年度の75.8%から32年度までに95%以上とする目標を掲げている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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