政府は11日、東京電力福島第一原発事故の避難者らを援助する「子ども・被災者支援法」の基本方針を閣議決定した。「支援対象地域」は県内の33市町村とし、それ以外の地域は除染や健康診断など個別の施策ごとに「準支援対象地域」を設定する。一方、県が求めている18歳以下の医療費無料化の継続的な財政措置は盛り込まれなかった。
支援対象地域は地域の分断を避けるため市町村単位で指定した。被災者への医療確保や子どもの就学援助、被災者の住宅確保や就業支援、自主避難の母子を対象にした高速道路の無料措置などの各施策が同法に基づいて実施される。
会津地方などの周辺自治体は準支援対象地域とした。個別の施策ごとに対象範囲が決められ、範囲に入れば援助が受けられる。具体的には、屋内運動施設の整備、県外に避難した被災者への情報提供などの施策が盛り込まれている。
県が県民健康管理基金を活用し18歳以下の県民を対象に実施している医療費無料化については、県の要望を受け当初の案を修正。「基金の各事業の状況を確認する」という文言が追加されたが、県が求めていた継続的な財源措置については明文化されなかった。
民間賃貸住宅を使った「みなし仮設」で暮らす人の入居期限を現行の平成27年3月末から延長することの検討や、新規避難者の公営住宅への入居を支援することも盛り込んだ。事故当時、県内に里帰り出産などで滞在していた人は住民票がなくても外部被ばく線量の調査が受けられることも明記した。
根本匠復興相(衆院本県2区)は閣議後の記者会見で「これまでも必要な施策は打ってきたが、基本方針を踏まえ引き続き的確に対応していきたい」と述べた。
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復興庁は11日、基本方針案に対する意見公募(パブリックコメント)の結果を発表した。4963件の意見が寄せられた。支援対象地域を33市町村に限ったことへの疑問や見直しを求める意見が2707件、被災者らの意見の反映が不十分との指摘が2063件あった。
■明文化は評価 県や市町村施策充実訴える声も
閣議決定された子ども・被災者支援法の基本方針について、県や市町村は自主避難者らへの支援が明文化されたことを評価する一方、方針に基づく施策の充実を訴える声も上がった。
県の担当者は「支援対象地域」以外も除染や健康診断実施の対象となることが盛り込まれたことを歓迎した。しかし、18歳以下の医療費無料化の財源措置が不明確で、子ども・妊婦の医療費減免などが明示されないとして「具体化に向けてさらに要望を続ける」と語った。
準支援対象地域となった会津若松市の担当者は「どの事業が準支援対象地域に対応するのか基準がまだ明確でない」と指摘した。支援対象地域の福島市の担当者は「自主避難者支援の後ろ盾ができたことは評価できる」としながらも、「あいまいな記述もあり、国が実効性を発揮するよう注視する」と述べた。
■本県の要望が一定程度反映 知事
佐藤雄平知事は「健康、医療の確保など本県の要望が一定程度、反映されたと受け止める」とした上で、「引き続き個別施策の具体化と必要な財源措置を求める」とのコメントを発表した。
■子ども・被災者支援法の基本方針の要点■
一、県内の中通りと浜通りの避難指示区域などを除く33市町村を「支援対象地域」とする。
一、県民健康管理基金により、県内の子どもなどに個人線量計による外部被ばく測定、ホールボディーカウンターによる内部被ばく測定を実施する。
一、被災者の子どもの就学や住宅確保、就業などを支援。子どもや妊婦の住居などを優先的に除染する。
一、民間賃貸住宅を使った「みなし仮設」の入居期限を平成27年3月末まで延長。同年4月以降は代替的な住宅の確保などの状況を踏まえて適切に対応する。
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