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【災害時の患者対応】 福島医大、86病院と情報網 震災教訓、25日始動 病院間の連携急務

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から2年7カ月が経過したが、当時を教訓にした県内の病院間の協力態勢が整っていない。震災では、病院間で情報を共有する仕組みがなく、1つの病院に患者が集中したり、受け入れ先が見つかるまでに時間がかかるなど混乱した。福島医大と県内86病院は25日、「ふくしま病院連携ネットワーク」を設立し、対応に乗り出す。受け入れ可能な病床数などの情報を提供し合う考えだが、緊急時に円滑に機能するかは未知数だ。

■教訓
 相馬市の公立相馬総合病院。震災と原発事故直後の数日間、固定電話が不通となり、使用可能な院内の公衆電話で市などと連絡を取り合った。ただ、台数が限られ、患者も利用するため、情報収集に支障を来した。同病院の事務担当者は「当時は、まったく外部と連絡が取れず、大混乱した。通信手段の確保の大切さを痛感した」と振り返る。
 一方、いわき市立総合磐城共立病院は、双葉郡の住民を含め、多数の被災者で長期間にわたり混雑した。診療所や薬局が休診・休止する中、普段服用している薬の処方を求め患者が詰め掛けた。同病院の事務局は「近隣病院の診療態勢や医薬品の在庫量などを把握できていれば、他病院に患者を紹介できた」と課題を口にする。

■打開策
 厚生労働省は現在、広域災害救急医療情報システム(EMIS)を運用している。医療関係者は、災害時の各病院のライフライン(電気、水道、ガス)の使用可能状況、人工透析患者の受け入れ可能状況などの情報を閲覧できる。しかし、空き病床数や診療科目、医薬品の在庫量など、災害時に病院間の連携に必要な情報が得られないのが現状だ。
 ネットワークは、病院間で情報が共有されていない課題を打開するのが狙い。福島医大が各病院に参加を呼び掛け、86病院でつくる。
 福島医大が想定している災害時の対応の流れでは、大規模災害が発生した場合、参加病院は入院・外来患者の受け入れ可能状況、医薬品、食料、水、衛生資材の在庫量などを専用のチェックシートに記入し、福島医大にファクスかメールで報告する。福島医大は情報を集約し、参加病院に周知する。情報は県災害対策本部、県病院協会、県医師会にも提供する。チェックシートには、災害用電話など使用可能な通信手段の項目も盛り込んだ。
 福島医大の担当者は「より細かな情報を共有することで、患者の容体に応じた対応が可能になる」と意義を語る。

■不備
 ネットワークには災害現場から病院まで患者を搬送する県内12の消防本部は参加していない。相馬地方広域消防本部は震災直後、電話が通じにくいため、職員が市内の病院に駐在し、病床の空き状況などの情報収集に追われた。同本部の担当者は「住民が最初に助けを求めるのは救急。消防にも病院の情報が提供されれば、迅速な搬送につながる」と訴える。
 病院が被災した場合、多くの入院患者を他の病院に搬送しなければならないが、ネットワークの想定には含まれていない。搬送の在り方も課題になる。
 自力で病院に向かう県民への迅速な情報提供も求められる。福島医大は各病院から集約した情報をホームページに掲載することを検討している。

【背景】
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故では、一部の病院で電話、ファクス、電子メールなどの情報伝達手段が寸断し、県、市町村、消防などの行政機関と連絡が取れなくなった。各病院の医師、看護師不足で診療態勢が整わない事態も生じた。被災した病院の入院患者の搬送先が決まらず、病状が悪化したケースもあった。政府の原発事故調査・検証委員会の最終報告書によると、大熊町の双葉病院の場合、避難に伴う環境の変化などで計50人が死亡したとしている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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