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今を生きる 被災地医療支え帰還 病院利用者に安心感 半年の勤務終え福岡へ

南相馬市立総合病院で患者の世話をする吉浦さん=29日

■南相馬へ派遣の看護師 吉浦由紀子さん(55)

 被災地の地域医療を支えようと半年間にわたって南相馬市立総合病院で奮闘してきた福岡市の看護師・吉浦由紀子さん(55)が29日、最後の仕事を終えた。「身の丈に合った支援ができたかな」。優しい表情で白衣のしわをのばした。
 吉浦さんは熊本県出身。昭和57年に同県の看護学校を卒業し、看護師として歩み始めた。福岡市立こども病院・感染症センターに勤務していた平成23年3月、東日本大震災が発生。被災地のために何かしたいという気持ちが募ったが、職場や家族を思い、その時は福岡市にとどまった。
 24年12月、福岡市職員の夫秀満さん(55)が自宅のテーブルに1枚の紙を置いた。被災した本県と岩手、宮城両県の自治体が全国市長会を通じて、元職員の派遣を求める要請書だった。娘2人の子育てを終え、自らの時間をつくろうと24年度いっぱいで退職を決めていた。吉浦さんの決断は早かった。テレビで南相馬市の看護師不足の窮状を知り、本県への派遣を申請した。南相馬市立総合病院からの要請を受け、今年5月から南相馬市の嘱託職員として働き始めた。
 27年間勤めていた小児専門の福岡市の病院から移り、当初は高齢の患者への対応に戸惑いを感じた。だが、仮設住宅での健康診断などを通して地域の人々の温かさに触れ、次第に自信を取り戻した。「大丈夫ですか。動かしますよ」。亡くなった両親と同年代の患者を気遣う声は病院利用者に安心感を与えた。
 吉浦さんは今後、福岡市で先天性障害がある子どもたちの支援活動に取り組もうと考えている。「看護師という資格を持っているだけで、私はあくまでも普通の主婦。自分ができることでこれからも手助けができれば」。そう話すと、秀満さんが待つ1000キロ先の自宅に向けて帰路に就いた。

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