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【森林再生事業】 民有林除染手付かず 手続き煩雑計画遅れ 予算未消化の恐れも

 県が6月開始を想定していた間伐による民有林除染が手付かずになっている。東京電力福島第一原発事故を受け、18市町村が国に事業実施を要望しているが、国、県との手続きが煩雑な上、作業用の林道整備などの準備も必要なためだ。復興関連予算の未消化が問題となる中、市町村からは平成26年度以降の予算確保への影響を懸念する声も出ている。

■着手まで半年
 県は「ふくしま森林再生事業」として、民有林の間伐事業を除染加速の柱の1つに掲げている。原発事故に伴う除染費用を国が負担する「汚染状況重点調査地域」に指定された40市町村が対象だ。県は国の復興関連予算から補助を受け平成25年度、約41億円を予算化した。
 しかし、市町村が事業要望を開始したのは7月ごろからで、18市町村の民有林除染事業は手続き途中だという。県などによると、事業要望から間伐除染の着手まで半年程度かかるという。
 事業開始までの手続きは【図】の通り。実施主体の市町村は県を通じ、林野庁に要望書を提出する。市町村ごとの予算配分が決まると、市町村は対象範囲などを定めた事業計画を作成し、同庁、県の審査を受ける。市町村は計画の承認を受けた後、森林所有者の同意取得業務を森林組合などに発注するなど複雑な仕組みだ。その後、林道整備などを経て除染開始となる。
 住宅地など生活圏の除染を進めても、森林の除染が進まなければ、風雨の影響などで再び生活圏の放射線量上昇が懸念される。自主避難者らの帰還促進や住民の不安解消に向け、県森林整備課の桃井栄一課長は「少しでも早く除染に着手できるよう市町村を支援する」と話す。

■青写真崩れた
 「間伐作業に入れるのは年明けになる」と石川町の担当者は見込む。7月に事業実施を要望し、これまでに国から予算配分と事業計画の承認を受けた。現在は事業着手に向け、委託業務発注などの準備を進めている。
 「遅くとも11月にはスタートできると考えていたのに...。青写真が崩れた」。住民らからは森林除染の早期完了を求める声が寄せられる中、担当者は不安を募らせる。
 柳津町も降雪に備え、11月には間伐作業に入る計画だった。現在、作業に入れるのは最短でも12月中とみている。担当者は「雪が降ってからでは遅い」と焦りを口にした。
 町は職員1人を専従させた。それでも業務の煩雑さから人手が足りず、臨時職員を雇用した。担当者は「複雑な手続きは通常業務を圧迫する。簡略化してほしい」と訴える。

■懸念
 県は県内全域の民有林の間伐除染完了まで20年程度かかると見込む。その間は毎年、国に予算要望しなくてはならない。政府の平成23、24年度の復興関連予算の消化率は今年3月末時点で77.2%にとどまり、今後の繰越金の扱いが注目されている。
 ある林業関係者は「(事業実施の)実績がないと26年度以降、予算を減らされかねない」と懸念する。
 一方、間伐事業に対する森林所有者の費用負担はないが、伐採木を販売した売上金を得ることができる。このため、間伐除染の対象となる順番をめぐり、所有者の間で不公平感が出ないかも市町村は心配している。

【背景】
 ふくしま森林再生事業は林野庁が約36億円、県が約5億円を予算化。県によると、汚染状況重点調査地域(40市町村)の民有林の面積は約18万3000ヘクタールで、平成25年度は約1000ヘクタールの間伐除染を実施する計画だ。一方、同地域の国有林は約17万7000ヘクタールで、林野庁が環境省の除染関係ガイドラインに沿って居住区域から20メートル程度の除染を進めている。同庁は現段階で国有林のその他の範囲は除染しないことを決めている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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