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スーパー創業 夫婦で「お客第一」貫く

■相馬市原釜 宍戸貞雄さん(81)トシヨさん(81)

 東日本大震災から11日で2年8カ月となる。津波は住民に親しまれるスーパーを創業した父母をさらった。後を継いだ長男は両親の思いを胸に商売に情熱を注ぐ。
 貞雄さんとトシヨさんは商売一筋の夫婦だった。相馬市で「スーパーシシド」を創業し、2人で切り盛りした。宮城県亘理町にも店を出し、地域住民の「台所」として親しまれるまでに成長させた。長男で現在社長を務める伸夫さん(57)は「仕事で苦しくなったとき、父がいたら、母がいたらと考えてしまう。ふっと寂しくなる」と両親の面影を思い浮かべる。
 貞雄さんは真面目で仕事に厳しい人だった。相馬市に生まれ、漁師やトラックの運転手、商店勤務を経験し、平成2年に市内でスーパーを始めた。従業員が仕事で困っていると、率先して引き受けた。朝から晩まで体を動かし、「お客第一主義」を貫く熱心な姿が従業員の心をつかんだ。21年に社長を伸夫さんに譲ってからも手伝っていた。
 トシヨさんは情に厚く、優しい性格だった。市内の出身で、貞雄さんとは見合い結婚だった。一男二女をもうけ、店でも家庭でも貞雄さんを支えた。貸家もしており、家賃を受け取りに行って生活が苦しい話を聞くと、お金を貸して帰ってきた。中途半端なことを嫌い、何事も最後までやり遂げることを身上にしていた。
 震災発生当時、貞雄さんとトシヨさんは相馬店で仕事をしていた。店内の被害を確認した後、自宅に戻った。貞雄さんらは近所の人から「津波が来る」と言われ、逃げようとしていた時にさらわれたとみられている。
 伸夫さんは地震発生直後に自宅にいたが、貞雄さんと交代するように相馬店の様子を見に出掛けた。貞雄さんと自宅の外で擦れ違ったのが父を見た最後となった。トシヨさんは約2週間後に自宅から西側に1キロ、貞雄さんは約1カ月後に自宅から西側約2キロ付近で自衛隊員に発見された。
 自宅と同様に相馬店も津波被害に遭った。昨年10月、内陸側にある同市中村に土地を借りて新たに「相馬リボン店」として営業を始めた。伸夫さんは4年後に七回忌の法要を行う。従業員にも参列してもらうつもりだ。「父や母のような仕事熱心な人がいたことを忘れずに伝えていく」。新築した自宅に飾られている2人の写真に誓っている。

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