東日本大震災

「3.11大震災・断面」アーカイブ

  • Check

【区域再編から1年】 大熊再生へ課題山積 除染 順番に不満 復興計画で町民に希望

タブレット端末で町の様子を確認する斎藤さん(右から2人目)

 東京電力福島第一原発事故で大熊町に設定された警戒区域が「帰還困難」「居住制限」「避難指示解除準備」の3区域に再編され、10日で1年を迎えた。町は今年度内にも、平成29年に帰還し郷土再生を目指す「復興まちづくりビジョン」をまとめる。ただ、「町内には戻らない」と考える町民は増えている。国の直轄除染の進め方に不満も漏れる。古里の絆の維持に向け、課題は山積している。

■将来像
 復興まちづくりビジョンには、町民帰還の受け皿となる町内復興拠点を整備する方針を盛り込む。福島第一原発の南西約8キロに位置する居住制限区域の大川原地区に住宅や役場、医療機関、商業施設などを集約し、福島第一原発の廃炉に関連した研究施設や企業の誘致も目指す。人口は町民1000人、研究施設や企業関係者ら2000人の合わせて3000人が生活することを想定している。今月中にも中間報告を公表する。
 渡辺利綱町長は「戻るかどうかの判断は、最終的には町民1人1人が決める。帰りたい人がいる以上、町を残すための努力を続ける」と言葉に力を込める。

■戻らない
 町は会津若松市内の仮設住宅ごとに町政懇談会を開いている。出席者からは、除染が進まない現状に対するいらだちの声が相次ぐ。
 国は早期帰還を促すため、放射線量の比較的低い避難指示解除準備区域と居住制限区域で優先して除染を進めている。町民の96%が暮らしていた高線量の帰還困難区域は、一部でモデル除染が行われた以外、ほぼ手つかずだ。
 「なぜ居住人口が多いところから除染しないのか」。町政懇談会では、男性が町幹部に詰め寄る場面もあった。町は環境省に帰還困難区域で除染を進めるよう要望しているが、前向きな返事は得られていないという。
 10月に復興庁などが実施した住民意向調査結果では、町に「戻らない」と答えた世帯が67.1%に達し、1月の前回調査を24・8ポイント上回った。町幹部は「町民の心をつなぎ留める施策が必要になる」と語る。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故により大熊町全域に設定された警戒区域は平成24年12月10日、空間放射線量に応じて3区域に再編された。町民の96%が生活していた地域が、原発事故発生から少なくとも6年間は帰還できない「帰還困難区域」となった。町は残る「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の町民が帰還しても生活は成り立たないとして、全域で5年間帰還しないことを昨年決めた。居住制限と避難指示解除準備の両区域では本格除染が進められており、本年度内に完了する予定となっている。町の人口は11月30日現在、1万952人。

【大熊区域再編から1年】 帰還見通し依然不透明 原発事故収束強く要求

 東京電力福島第一原発事故の避難区域再編から1年を迎えた大熊町だが、町内が中間貯蔵施設の建設候補地になるなど、住民帰還に向けた見通しは依然不透明だ。「古里に戻るのは、原発事故の収束が大前提だ」とする声も上がる。
 「たとえ除染したからといって、まだまだ原発は危険な状態だ。そこに帰れと言うのか」。福島第一原発から約5キロの熊1区に自宅のある菅野由美子さん(53)は会津若松市で開かれた町政懇談会で、帰還を目指す町の姿勢に疑問をぶつけた。
 小入野の根本充春さん(73)宅は、中間貯蔵施設の建設候補地に入る可能性がある。「国は施設整備の方針を一刻も早く明確にしてほしい。そうでないと生活再建が見通せない」と訴えた。
 町幹部は「原発事故収束の見通しや中間貯蔵施設の計画について、町は答えられない。少しでも町民が希望が持てる取り組みを示していくしかない」と語る。
 同市に避難中の斎藤猛さん(67)は町から配布されたタブレット端末で町内のライブ映像や、パノラマ写真を眺めている。「これからは寒さが増し、一時帰宅する回数も減る。せめて画面で古里に触れていたい」と、故郷への思いを募らせている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

「3.11大震災・断面」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧