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今を生きる 車いすラグビー代表目指す 夢は7年後の東京 家族、仲間に恩返しを

東京都開催のパラリンピック出場を目指し、仲間と練習に励む渡辺さん(左)=8日、いわき市

■大熊出身の会社員 渡辺直紀さん(24)

 大熊町出身の会社員渡辺直紀さん(24)=東京都八王子市=はウィルチェアーラグビー(車いすラグビー)の日本代表入りを目指し、コートを走り続けている。目標は7年後に東京都で開かれるパラリンピックだ。交通事故で頸椎(けいつい)を損傷し、5年ほど前から車椅子生活になった。「前向きでいられるのは家族、仲間のおかげ」と感謝する。東京電力福島第一原発事故で避難生活を送る家族らの前で「日の丸を着け、恩返したい」と誓う。
 平成21年1月、成人式の前日だった。宮城県亘理町の6号国道を車で走行中、脇道から右折してきた車と衝突した。大けがを負い、岩沼市の病院に運ばれた。
 意識が戻ると、首から下がまひし、手足に力が入らない。会社を辞めた。「体も心もどん底。周りに迷惑を掛けてしまった」と振り返る。片道2時間かけ、母の栄子さん(59)が見舞いに来た。きょうだいが8人いる。皆、自暴自棄になりそうな自分を励まし、時には叱ってくれた。
 入院生活を終え、埼玉県所沢市の国立職業リハビリテーションセンターに入所していたころ、原発事故が起きた。町に戻って家族と生活するつもりだったが、県内企業の就職面接が全て中止になった。東京都内の印刷会社に勤め、1人暮らしを始めた。
 「早く自立し、家族にこれ以上心配を掛けたくない」。センターに入所した際に始めたラグビーに打ち込んだ。障害の程度を問わず、一丸となって戦う競技の奥深さに引かれた。日本代表の島川慎一さん(38)と出会い、チーム「BLITZ」に入った。
 切れ味鋭いターンとスピードで、初出場した昨年の日本選手権大会でチームの3年ぶりの優勝に貢献。全7クラスのうち2・0のクラスでMVPに選ばれた。今年春には日本代表の強化指定選手に選ばれ、夢に一歩近づいた。
 今月7、8の両日、チームでいわき市のいわきサン・アビリティーズで合宿した。郡山市に避難している栄子さんや、いわき市で暮らす兄成光さん(32)らが初めて応援に来た。「自分たちも頑張るからね」。激しくぶつかり合いながら、前に進む姿を見て、声を掛けてくれた。直紀さんは「競技を通じて、家族をはじめ、福島の人を喜ばせることができる」と実感した。
 来年1月には日本代表の選考に関わる日本選手権大会が控えている。「30歳くらいが選手として一番脂が乗るころ」。7年後の大舞台を見据える。

※ウィルチェアーラグビー 1チーム4人制で、四肢にまひなどが残る障害者が対象。障害の度合いにより、各選手に持ち点が与えられ、重い順に0・5から3・5まで、0.5単位で7クラスに分けられる。出場する4選手の合計が8点を超えてはならない。試合はバスケットボールと同じ広さのコートで行う。1ピリオド8分間の4セット。敵陣のゴールラインを越えると1点が与えられる。

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