県内の子どもの肥満傾向が続いていることが明らかになった13日、県内の学校や保護者に戸惑いが広がった。現在、東京電力福島第一原発事故に伴う学校の屋外活動の制限はほとんどない状況。原発事故直後の屋外活動の減少が影響しているとみられる。学校側は児童・生徒が運動する機会を充実させながら、子どもの健康維持に全力を注ぐ。
■運動量増やせ
福島市では市立小学校の約半数が今も屋外活動に制限を設けているが、運動会など長時間の活動が対象。授業や休み時間は平常時に戻った。「原発事故直後の運動不足の影響が、今も解消されていない面があるのではないか」。福島三小の土屋悦男校長は調査結果を、こう分析した。
同校では、平成23年3月の原発事故発生後、同年9月まで屋外での運動を制限した。その後、徐々に屋外の運動を増やしてきたが、昨年11月の校内持久走大会では途中で歩きだす児童が目立ったという。肥満気味の児童も増えてきた。
「子どもの健康を守れるのか」。教職員に危機感が芽ばえた。同校は、ランニングを習慣付けるため、マラソンと同じ42・195キロを目標に設定し、走った距離を記録するカードを今年4月、全児童に配った。以来、毎朝、始業前に校庭を走る児童の姿が見られるようになった。「成果は出つつある。今後も着実に進めていく」。土屋校長は手応えを感じている。
郡山市内の小中学校も、昨年3月まで屋外活動を3時間以内に制限していたが、現在は全て解除した。市内の高倉小では、休み時間に児童、教員が一緒に走り、運動が好きになる雰囲気づくりに努めている。長瀬龍男教頭は「職員には積極的に児童に運動をさせるよう意識させている」と説明した。
■外に出ない
「子どもたちが自分から外に出て体を動かさないようになってしまった」。中学1年生から2歳まで5人の子育てをする福島市の主婦力丸ゆり子さん(37)は子どもの運動不足を心配する。
原発事故が起き、屋外遊びがあまりできなかった。一時的に太り気味になった子どももいたという。県内各地に屋内遊び場が整備されたが、幼児向けの施設が多い。「自治体は、小中学生でも思い切り体を動かせる屋内施設を整備してほしい」
小学生、中学生、高校生の3人の子どもを持つ郡山市の会社経営佐藤聡さん(47)は原発事故直後、放射線が心配で屋外活動を控えさせていた。現在は校庭の除染も進んだため、積極的に外遊びさせている。肥満傾向が改善していない調査結果に対し、「原発事故直後に運動できなかった分を取り戻す方法を考えたい」と話した。
■保護者の啓発必要
県内の肥満傾向が依然として高い現状を受け、県教委は運動不足の解消のために平成18年に福島大と共同開発した本県独自のプログラム「運動身体づくりプログラム」の改定を進め、県内の小学校で普及させる。
県教委は原発事故発生後、休日の運動が減っている面もあるとみており、児童生徒と共に、保護者への啓発にも力を注ぐ方針だ。
■小児科医 体重適正化に時間必要
福島市医師会理事で竹内こどもクリニック院長の竹内真弓医師(59)は「原発事故直後の運動不足の影響が今も残っている。現段階で運動をするようになっても、いったん太った子どもが適正な体重になるには時間がかかる」とみる。急激に体重を落とすのではなく、時間をかけてもバランスの良い食生活や運動を続けて適正な体重に戻す必要性を強調した。
一方、原発事故発生後に外遊びをしなかった子どもに運動をする生活習慣がついていないケースがあると指摘。将来的な肥満につながる恐れがあり、「保護者が意識的に運動させるべきだ」と求めた。
(カテゴリー:3.11大震災・断面)