東日本大震災

  • Check

「帰還へ」「移住か」 両面支援に反応さまざま

仮設住宅の近くの畑で取れたダイコンをうれしそうに見詰める大和田操さん(右)と妻のキヨさん

 政府が東京電力福島第一原発事故に伴う避難住民の早期帰還と、避難先への移住の両面の支援を打ち出した復興指針を決定した20日、避難住民は「生活再建へ一歩踏み出すきっかけになる」と歓迎した。一方で避難区域の除染が進まず、地域再生などの将来像や放射線量の低減見通しが具体的に示されない中、「今すぐには帰還か移住かを選択できない」と思い悩む住民もいる。
 「帰還に向けて少しは前進したかな」。郡山市の仮設住宅に避難している富岡町の農業大和田操さん(79)と妻のキヨさん(80)は、政府の復興指針を前向きに受け止めた。
 3月の避難区域再編で警戒区域が解除されてから夫婦で月1回は自宅の掃除をして帰還の準備をしている。避難生活の中でも仮設住宅の隣に畑を借り、野菜を作っている。収穫したばかりのダイコンを手に「早く町で農業を再開したい」と願う。
 築48年の2階建ての自宅は瓦屋根が一部崩れ、風呂場の床タイルも壊れたまま。至る所に東日本大震災の爪痕が残り、補修にいくら費用が掛かるか分からない。「一日も早くかつての暮らしを取り戻したい。指針通りに賠償が上乗せになれば、帰還の後押しになる」と期待した。
 いわき市の仮設住宅に夫と2人で避難している大熊町の主婦(59)も「家が持てるかもしれない」と復興指針に希望を見いだした。
 原発事故前は新築間もない自宅で長男夫婦らと家族5人で生活していた。今は3カ所に分散して避難し、ばらばらの生活を送っている。空間放射線量を考えると、帰還はできないと考えている。家族一緒の生活を取り戻したいと、いわき市内に家を建てることを考えたが、費用面から諦めていた。「賠償金が出れば...。早く落ち着ける場所がほしい」
 ただ、政府の具体策はこれからだ。浪江町から東京都江戸川区に避難している会社員今泉敏徳さん(54)は避難生活が長期化するにつれて関東地方などへの移住を考え始めており、「新しい住宅が持てるような十分な賠償にしてほしい」と望んだ。既に避難区域にある自宅の修繕を行った田村市都路町の農業坪井久夫さん(63)は「過去の修繕分も賠償すべきだ」と話した。

■判断材料不足の声も

 「お金をもらえば解決するという問題ではない」。福島市の仮設住宅で暮らす浪江町の無職川崎カヨ子さん(72)は強調する。早期帰還か、移住かの選択を迫られる住民にとって、判断材料は十分とは言えないからだ。
 川崎さんの畑はイノシシ被害で荒れ放題で、町内の自宅はまだ除染が始まっていない。月に1、2回は一時帰宅するが、復興の足音は聞こえてこない。「除染で空間放射線量がいつまでにどれだけ下がるのか」「商店街は復活するのか」。帰りたい気持ちは強いが、先が見通せないのが現実だという。
 「町の将来の具体像が見通せなければ、帰還するかどうかを判断しようがない」。復興の道筋を一日も早く示すよう政府に求めた。

■川内の帰還住民「支援忘れないで」

 川内村の旧緊急時避難準備区域にある自宅で夫と暮らす60代の女性は「避難指示が解除され、自宅に戻った住民の支援も忘れないでほしい」と訴える。
 原発事故前、村民が通院や買い物に訪れていた富岡町や大熊町は今も避難区域にある。遠方のいわき市などに通うしかなく、ガソリン代がばかにならない。かつては親子2世帯で同居していたが、子ども世帯は村外に避難したまま。二重家計で生活費もかさむ。
 精神的賠償は既に打ち切られたが、以前の生活環境には程遠い現状に、「自分たちのような住民にも何らかの支援を検討してほしい」と要望した。

東日本大震災の最新記事

>> 一覧