東日本大震災

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早期帰還者に90万円 帰還困難区域の移住者も賠償上乗せ

 政府は20日、原子力災害対策本部会議を開き、東京電力福島第一原発事故からの復興指針を決定した。避難指示解除後1年以内に帰還する住民に、「早期帰還者賠償」として1人当たり90万円程度を支払う。列車、バスなどの不通による交通費の増加分などに充てることを想定している。一方、避難指示の長期化が予想される帰還困難区域の住民には、移住先での住居確保のため賠償金を上乗せすると明記した。
 早期帰還者賠償は、原発事故発生から4年後の平成27年3月までに避難指示の解除される地域が対象。政府は、早期帰還に向けた取り組みをまとめた「早期帰還・定住プラン」の実施目標を「今後1、2年」としたことなどを踏まえ時期を決めた。
 比較的早期の避難指示解除が見込める「居住制限」「避難指示解除準備」両区域では、原発事故前より遠距離の通勤・通学、タクシーなどによる通院、買い物を強いられる帰還者が出ることを想定し、生活費増加分として90万円程度が適当と判断した。
 避難指示を解除した市町村単位で住民から早期帰還者賠償の申請を受け付ける。支払いに際しては、実際に自宅に戻り生活していることを、どう確認するかが課題になるとみられる。
 復興指針には、帰還者それぞれの外部被ばく線量の把握・管理を強化する方針も盛り込まれた。希望者に個人線量計を配布するとともに、測定結果に応じて被ばく低減策などを指導する相談員を配置し、帰還者の健康不安解消につなげる。また、相談員の活動や資質向上を支援する拠点も整備するとしている。
 居住制限、避難指示解除準備両区域の精神的損害賠償は避難指示解除後1年で打ち切る。
 会議で安倍晋三首相は「今年8月に全ての市町村で区域見直しを終えたが、全体の動きは残念ながら遅れている」との認識を示した上で、関係閣僚に「地元と十分に協議し、被災者の生活再建と関係自治体の再生の道筋を具体化してほしい」と指示した。
 政府は避難指示解除から1年以内に帰還する住民の生活支援に向け、1人当たり90万円を支払う。ただ、道路や上下水道といった社会基盤の復旧が遅れることも予想され、自宅に戻り日常生活を始めることができるかどうかは不透明だ。
 最も早い解除が見込まれる田村市都路町の避難区域は道路や水道などがほぼ復旧しているが、双葉郡内などでは復興需要による作業員の人手不足で、手付かずの地域も多い。社会生活を営むには、医療機関や商業施設の再開も不可欠だ。
 新たな賠償は避難指示解除後1年以内に帰還した住民が対象となるが、期間内で復旧・復興事業が進み、原発事故前の生活環境に戻る保障はない。県幹部は「わずか1年で安定した生活環境を整えるのは困難」とみて、政府に帰還者支援のさらなる強化を求める考えだ。
 一方、帰還困難区域については移住支援策を打ち出すだけでなく、帰還の判断材料となる放射線量の見通しなどを示し地域の将来像を地元と検討するとした。しかし、帰還希望は減少している。今年10月の大熊町民を対象にした調査では、約7割が「戻らない」と回答した。古里に帰るのか、移住するのか。住民の考え方は多様で、きめ細やかな支援を続けることが政府の責務だ。(東京支社編集主任・渡部 総一郎)

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