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避難者間に差 不満の声 700万円追加賠償 古里分断を懸念 「平等に」「精神的苦痛同じ」

 東京電力福島第一原発事故発生後7年目以降の精神的損害賠償について、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が帰還困難区域の住民に一人当たり700万円を追加して支払う指針を決めた26日、居住制限、避難指示解除準備両区域の住民からは「同じ避難者なのに格差が出る」と不満の声が上がった。賠償金の有無によって、地域の分断が起こりかねない、との指摘もある。避難区域の家屋・宅地の賠償額上乗せには、「避難先で家を新築するには足りない」と嘆きが漏れた。
 「賠償に差が出ると、住民の気持ちの溝が深まりかねない」。富岡町の居住制限区域から福島市の借り上げ住宅で生活する無職堀川潔さん(73)は憤る。
 町には帰還困難、居住制限、避難指示解除準備の三区域があり、帰還困難区域の住民は約3割だ。町は同額を支払う一括賠償を求めてきた。賠償金に格差が生まれることで、町民に亀裂が生じると懸念するためだ。
 審査会は帰還困難区域の住民の割合がともに96%を占める大熊、双葉両町に配慮し、両町は全区域で一人700万円が支払われる見通しとなった。「双葉郡のつながりを維持するためにも、賠償は平等にすべきだ」。堀川さんは訴える。
 「帰還困難区域と同じ賠償が支払われるよう、関係機関に働き掛けてほしい」。浪江町の居住制限区域の立野上行政区長を務める佐藤軍二さん(70)は26日、地区住民の署名を添えた要望書を馬場有町長に手渡した。
 立野上地区は帰還困難区域に隣接し森林に囲まれているため、放射線量が高い場所が点在するという。古里へ帰れず、今後の生活を見通せない状況は、帰還困難区域の住民と同じだと考えている。
 飯舘村の居住制限区域に自宅があり、福島市の借り上げ住宅暮らしを続けている自営業高橋仁司さん(59)も「精神的な苦痛は帰還困難区域と同じだ」と格差解消を求めた。
 一方、帰還困難区域に自宅がある葛尾村の工房指導員大槻勇吉さん(64)は審査会の指針に配慮を感じたという。ただ、生活再建に必要な費用は住民によって異なるため、「金額の評価は難しい」と複雑な表情を浮かべた。

■「土地購入、住宅新築には足りない」 生活再建に不安
 避難区域の家屋・宅地の賠償額を上乗せするとした指針に対し、双葉町から、いわき市の仮設住宅に避難している無職坂本昌彦さん(72)は「土地を購入して、住宅を新築するには足りない」との渋い表情を見せた。新たな住宅確保は難しいとみて、災害公営住宅への入居を検討している。
 会津若松市の仮設住宅に暮らす大熊町の無職末永精一さん(77)は、いずれは故郷と気候が似ている浜通りに移住したいと考えている。だが、最大の課題は金銭面。「新たな土地で生活を再建できるだけの額が本当に支払われるのか」と不安を口にした。

■額上乗せに一定の評価 高橋県司法書士会長
 県司法書士会の高橋文郎会長は、家屋・宅地の賠償額を上乗せする基準を決めたことに対し、「避難者の声が少なからず反映された」と一定の評価をした。しかし、住宅ローン問題を抱える住民が賠償金を受けても、ほとんどを返済に回さなければならないのが実情だ。このため、「避難住民の生活再建には、いまだ不十分。ローン対策など個別事情に応じた指針が必要だ」と指摘した。

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