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【ため池・森林除染 国予算化見送り】 国と県、平行線 県や農家 安全確保に必要 環境省 影響考えにくい

 県内の農業用ダム・ため池と森林の除染費用が国の平成26年度当初予算案に盛り込まれず、農家や関係団体から「安心して農業ができない」と不安の声が上がっている。県は住民生活と農産物の安全確保に向け再三、環境省に除染の実施を求めてきた。しかし、同省は「周辺環境への影響は考えにくい」としており、両者の協議は平行線をたどっている。県と農林水産省は26年度、放射性物質検査を実施するダム・ため池の箇所数を増やす。間伐による県独自の森林除染も進め放射線量の低減を目指す。

■異なる見解
 県と農水省は今年度、県内の農業用ダム・ため池合わせて1940カ所で水底土壌の放射性物質を検査した。約3割に当たる558カ所から家庭ごみなどを搬入する一般処分場で管理できない指定廃棄物(1キロ当たり8000ベクレル超)に相当する放射性セシウムが検出された。県は周辺住民への影響が懸念されるほか、農産物への風評を新たに招きかねないとして、環境省に早い時期に除染するよう訴えてきた。
 しかし、環境省は一貫して「計画にない」と回答。26年度当初予算案に、関連費用は計上されなかった。「たまった水に、放射線を遮蔽(しゃへい)する効果があり、周辺環境に与える影響は小さい」としており、県との溝は埋まらない。
 伊達市霊山町の農業佐藤吉雄さん(71)は「ため池の底の土は下流に流れ出す可能性がある。農産物に放射性物質が付着しないか心配だ」と語る。
 一方、環境省は国の直轄除染地域で居住区域から20メートル程度の範囲の森林除染を行っている。これに対し、県は県内全域の森林で実施するよう要望してきた。環境省は「住宅、農地などを優先しており予定にない」と説明している。

■拡散を防げ
 県と農水省は26年度、これまで実施していなかったダム・ため池で放射性物質検査を始める。1カ所当たり1地点だった調査地点を増やし、より詳細なデータを集める。土壌の拡散を防ぐため、放射性物質濃度が高い場所に「シルトフェンス」と呼ばれる水中カーテンを設置する。
 県農地管理課の担当者は「農水省と連携して継続調査し、除染の必要性を環境省に訴えていく」と話す。

■独自の対策
 県は森林の放射線量低減に向け、汚染状況重点調査地域に指定された40市町村の民有林で間伐を加速させる。
 県から予算の交付を受けた市町村が計画を策定し、森林組合などに作業を委託する。現在、19市町村が計画づくりを進めており、県は残る21市町村にも取り組みを促す。
 避難指示解除準備区域の田村市都路町を管轄する、ふくしま中央森林組合の吉田昭一参事は「森林除染が進まないと、住民は安心して自宅に戻れない」と指摘する。

【背景】
 県内3730カ所の農業用ダム・ため池のうち、県は今年度、1640カ所、農林水産省は300カ所の土壌の放射性セシウム濃度を調べた。計558カ所から指定廃棄物に相当する放射性セシウムが検出された。一方、県は汚染状況重点調査地域(40市町村)の民有林約18万3000ヘクタールを対象に間伐による除染を進める。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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