東日本大震災

「あなたを忘れない」アーカイブ

  • Check

温泉巡りや旅行楽しみ

■いわき市久之浜町 鈴木棟子さん(67)

 棟子さんは温泉巡りや旅行が好きだった。平成3年に結婚した夫の浅二さん(73)と、楢葉町の天神岬温泉や、いわき市の蟹洗温泉などへしばしば出掛けた。須賀川市の牡丹園を訪れたこともあった。
 膝の具合が悪く、つえを使っていたが、遠出するときはうれしそうな顔を見せた。久之浜町の自宅アパートに、夫婦で穏やかに暮らしていた。棟子さんの実家が近かった。
 震災の津波はアパートにいた2人をのみ込んだ。浅二さんが先に流された。棟子さんの行方は分からなかった。浅二さんはずぶぬれになりながらも一命を取り留めた。東京電力福島第一原発事故の発生で避難所を転々とした。「妻はきっと無事でいる」。浅二さんは信じていた。
 震災から13日後、棟子さんが見つかった。穏やかな表情だった。ただ、原発事故による放射性物質が付着している可能性があったため、棟子さんに触れることができなかった。
 生前、浅二さんは棟子さんに「100歳まで一緒に生きよう」と話したことがあった。棟子さんは「長すぎるよ」と笑って返した。浅二さんは今も悔やむ。「せめてあと10年は生きていてほしかった。好きだった温泉や旅行に、もっとたくさん連れて行ってやりたかった」


カテゴリー:あなたを忘れない

「あなたを忘れない」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧