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漁復活誓い込め 震災後初、サケの稚魚放流 津波でやな場、ふ化場損壊... 仲間と乗り越え万感

漁協の蓄養池でサケ漁復活への思いを語る松本さん

■楢葉の木戸川漁協組合長 松本秀夫さん(66)

 古里再生の第一歩だ-。楢葉町の木戸川漁協組合長・松本秀夫さん(66)は15日、木戸川にサケの稚魚を放し感無量の表情を見せた。いわき市内の仮設住宅で避難生活を送りながら、町の観光の目玉であるサケ漁復活を目指し準備を進めてきた。この日、放流したサケの多くは4年後、木戸川に戻る。松本さんは誓った。「楢葉で生活を再開し、町のみんなとサケを迎える」
 夢も希望も打ち砕かれた。
 東日本大震災の津波を受け、楢葉町前原にある木戸川漁協のサケのやな場と、ふ化場は壊れた。蓄養池にいた1500万匹の稚魚は流された。
 東京電力福島第一原発事故により、漁協施設周辺は警戒区域となる。施設復旧のために町内に立ち入ることはできない。「人生そのものを奪われたようだ...」。松本さんはいわき市中央台の仮設住宅で、もんもんとした日々を過ごした。平成12年に妻かほるさん=当時(52)=を病気で失った。初めての土地での1人暮らし。木戸川漁協の仲間の励ましが心の支えとなる。狭い仮設の部屋で酒を酌み交わし、サケ漁再開を誓った。
 24年8月、避難区域再編で漁協施設周辺は避難指示解除準備区域となり、日中の立ち入りが可能になった。松本さんは、いわきから1時間以上かけて通い、仲間とともにがれき撤去や事務所の片付け作業に追われた。
 木戸川漁協関係者のサケ漁再開に向けた情熱が報われる。町が費用を負担し、来年秋までにやな場とふ化場を整備することが決まった。24、25の両年、実施したサケのモニタリング検査で放射性物質は検出されなかった。震災の前年に放流したサケは今秋、木戸川に戻ってくる。稚魚の放流を再開するには、今年が最も良いタイミングだと判断した。
 15日は、いわき市の夏井川鮭増殖漁業組合から購入した1万匹を放した。「1匹でも多く、元気で帰ってきてほしい」。松本さんの言葉には避難指示の解除後、離れ離れになった懐かしい顔と町内で再会したい、との願いもこもる。
 松本さんには夢がある。震災前、毎年10月にやな場周辺で開いてきた「サケ祭り」の復活だ。つかみ捕り大会で、はしゃぐ子どもたちの笑顔が忘れられない。
 「必ず、愛する古里・楢葉を取り戻してみせる」

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