東日本大震災

「原発事故関連死」アーカイブ

  • Check

(70)絶望 追い込まれた命 市町村判断に限界 対応異なり遺族が混乱

国が参考資料として本県などに配布した新潟県中越地震の関連死の認定基準例。自殺は「震災を契機としたストレスによる精神的疾患に基づくもの」などとしている

 須賀川市の農家樽川和也さん(38)は21日午後、市役所の仮庁舎となっている須賀川アリーナにいた。東京電力福島第一原発事故に伴うキャベツの出荷停止を受けた翌日の平成23年3月24日、共に農作物を育てていた父の久志さん=当時(64)=を亡くした。将来を悲観し、自ら命を絶った父を震災(原発事故)関連死に認めてほしい-。その一心で災害弔慰金の受給を申し出た。
 23年7月には、当時の職員から「現在の基準では震災関連死に該当しません」と告げられていた。
 あれから2年9カ月-。
 他の市町村では自殺と原発事故の因果関係を認め、遺族に災害弔慰金を支払っているケースがあった。東電は和也さん側と裁判外紛争解決手続き(ADR)で、久志さんの自殺と原発事故の因果関係を認め、和解している。関連死の認定事務を行う須賀川市社会福祉課の水野良一課長(54)は「以前の基準と現在は違う。再検討し、早期に結論を出したい」とした。
 「市役所から前向きな返事をもらった。関連死に認定されると期待したい」。和也さんは、胸のつかえが下りていくのを感じた。
 須賀川市の人的被害は地震による藤沼湖決壊などで命を落とした直接死9人と、震災でショック死した関連死1人。23年5月の認定が最後だ。関連死認定で判断に迷う案件はなかったという。庁内に審査会を設けていない。
 水野課長は、厚生労働省が平成23年4月30日付で都道府県に送付した資料「災害関連死に対する災害弔慰金等の対応(情報提供)」をめくった。
 震災直後、県から配布され、市が認定判断のよりどころにした文書だ。16年の新潟県中越地震で弔慰金が支給された具体例や認定基準が記されている。自殺との因果関係の記述もある。「震災を契機としたストレスによる精神的疾患に基づくもの」
 久志さんは受診しておらず、精神的疾患を証明する診断書はなかった。「自殺だから該当しないというわけではなく、精神的に病んでいたとか、病院に通っていたとかがなかったからだと思います」。水野課長は「該当しない」と告げた当時の判断を、こう推察した。
 避難生活は長期化し、因果関係の証明が難しくなっている。一方で、自殺との因果関係を認める潮流が生まれる中、和也さんの訴えは埋没したままだった。
 厚生労働省は震災後、市町村の負担軽減のため、県の審査会設置を認めた。岩手、宮城県は審査会を設けた。被災3県で本県だけ審査会がない。
 「避難経路が市町村ごとに違う。各市町村で審査会を設置した方がきめ細やかに被災者を救済できる」。県はそう説明するが、結果として市町村によって対応が異なるという格差を生んだ。審査会を設けている自治体の関係者は、県への不満をあらわにした。「県は市町村に丸投げし過ぎだ。生命・財産に直結する問題を市町村が個別に判断するには限界があり、関連死認定という被災者救済に不公平感が出る」
 自然災害を前提に施行された災害弔慰金の支給に関する法律で、避難の長期化や放射性物質の拡散といった原子力災害特有の不条理を、どこまで酌むことができるのか-。原発事故に特化した関連死認定基準がないため、今も市町村の審査会と、訴訟やADRでの因果関係の認定に食い違いが生じている。
 こうした現状に自殺や災害弔慰金を所管する内閣府の担当者は重い口を開いた。「制度上、仕方ない部分がある。被災者遺族を混乱させてしまっているのは事実だが、個別に対応してもらうしかない」

カテゴリー:原発事故関連死

「原発事故関連死」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧