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座談会(7)市町村で判断に差 遺族に不公平感、訴訟も 認定の現状

樽川和也氏

 -震災(原発事故)関連死は現在、津波や地震で命を落とした直接死を大きく上回り、1700人に迫っています。

 新開文雄氏 原発事故の影響で、元の生活をなかなか取り戻せない状況の中で、古里を思いながら多くの人が亡くなっています。これは震災関連死というより、原発事故関連死です。被災3県のうち福島の自殺者が、岩手、宮城と比べて突出して多いのも特徴的です。
 成井香苗氏 岩手、宮城両県の震災関連死は、ほぼ頭打ちなのに、福島県だけが増え続けています。原発事故で、家があるのに帰れない、将来が見えずに不安が募る、遠くに避難した孫に会いに行くこともできない-などのさまざまな悩みを抱えながら避難住民は生活しています。長期間のストレスにより持病などが悪化し、命が縮まったり、場合によっては自死に至ったりするケースもあります。

 -関連死に認定されると、遺族に災害弔慰金が支給されます。弔慰金制度にも課題が多いように思います。

 新開氏 そもそも、地震や津波などの自然災害を前提にした制度です。震災と原発事故の発生直後は、この制度の運用は、やむを得ない部分がありました。しかし、新潟県中越地震の「長岡基準」は、地震という一回性のものです。一方で、原発事故は発生からずっと続いていて長期化しています。それなのに、地震など自然災害の基準をそのまま県内の状況に適用し続けています。関連死かどうかの認定が窮屈な判断になっていると感じています。
 弔慰金が支払われるべき対象として認められないケースもあり、関連死の不認定処分を取り消すよう自治体に求めて裁判になっています。市町村間で認定判断に偏りがあることが、不公平感を生んでいます。
 渡辺彦巳氏 私の父もそうでした。川俣町山木屋から埼玉県草加市に避難し、体調を崩し、入院しました。原発事故から約半月後、自宅に戻り、急性心筋梗塞で亡くなりました。慣れない長距離移動、入院によるストレスと疲労などがあった上に、先が見えずに生きる希望を持てなかったんだと思います。
 父が亡くなってから2週間ほどで山木屋は計画的避難区域になりました。原発事故による避難が父親の死期を早めたはずで、関連死だと思いました。川俣町役場に災害弔慰金の受給を申請しましたが、地震で圧死したわけでもないので該当しないと言われ、避難中の死は対象とされませんでした。原発事故関連死を弔慰金の対象に含めるとした国の見解が町職員に周知されていなかったのが原因でした。2年以上たってから、関連死に認められました。
 樽川和也氏 私の父親も同じです。生産したキャベツの出荷が制限された翌日に、自ら命を絶ちました。しかし、須賀川市役所からは、現在の基準では関連死に該当しないと言われました。約2年9カ月後、福島民報に取り上げられてから、再び市役所を訪れると、「以前の基準と現在は違う。再検討し、早期に結論を出したい」と前向きな答えをもらいました。

 -なぜ市町村で格差は生まれているのでしょうか。

 新開氏 原発事故関連死かどうかを判断する災害弔慰金の審査会を県が設置していないことが大きいと思います。双葉郡8町村は一つの審査会でまとまっていますが、その他は市町村ごとに設けています。審査会がない市町村もあります。判断は市町村によってまちまちです。
 審査会には医師や弁護士ら有識者が入っていますが、ベテランか新人かでも考え方は違いますし、専門分野が違えば認定判断も変わってくるかもしれません。それでいいのでしょうか。県は「市町村の方が避難の実態を把握している」として審査会を設けてきませんでした。震災と原発事故から3年余りが経過しました。それでも原発事故の心労を抱え、体調を崩し命を落とす人がいます。県が全県的な審査会を設けて、統一的な基準で判断すべきだと思います。

■樽川和也氏
 たるかわ・かずや 須賀川市在住。原発事故により野菜の出荷制限が出された翌日に父親が自殺した。災害弔慰金の相談で須賀川市役所を訪れたが、対象外とされた。その後、裁判外紛争解決手続きで東電が自殺と原発事故の因果関係を認め和解。38歳。

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