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今を生きる 亡き息子を思い旗指物友禅流し 野馬追まで2カ月作業に熱

旗指物を川に広げ、丁寧にのりを洗い落とす西内清実さん(右)

■原町・西内染物店 2代目 清実さん 82

 国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」の開催まで2カ月を切った27日、南相馬市原町区の水無川で騎馬武者が背負う旗指物の水洗い「友禅流し」が行われた。同区の西内染物店の2代目西内清実さん(82)は、昨年12月に急逝した3代目で長男の清祐(せいゆう)さん=享年(51)=の分まで思いを込め、作業に熱を入れる。
 清実さんと清祐さんの妻実恵さん(42)が、絹羽二重の旗指物を川面にさらした。もち米で作ったのりを洗い流すと、徐々に旗指物が鮮やかな色合いに変化していった。「色はどうだ」「大丈夫そう。良かった」。二人は、ほっとした表情を見せる。清実さんは「野馬追に向けて休む暇はない。ぎりぎりの綱渡りだ」と汗を拭った。
 清実さんが清祐さんに本格的な仕事を譲ったのは約10年前。「これで俺もゆっくりできる」。職人として腕を上げた息子の姿に安心していた。しかし、昨年11月、清祐さんを病魔が襲った。風邪のような症状が続き、病名すらはっきりしないまま、この世を去った。
 大黒柱となっていた長男を失った。家業を続けるか、やめるか-。迷う暇もなく、仕事の依頼は舞い込んでくる。清祐さんがやり残した仕事もあった。清実さんは第一線に戻る決心をした。「知り合いには『まだ仕事するのか』と言われる。俺には定年はないみたいだ」と気丈に笑顔を見せる。
 実恵さんは夫の清祐さんの分まで清実さんの仕事を手伝う。「遺志を継ぐとか、大層な気持ちでやっているわけではない。仕事を頼みに来てくれる人がいるから頑張っている」と話す。
 清実さんの妻久子さん(75)も含め、家族3人で家業を続ける。後継者は決まっていないが、伝統はできる限り継承していくつもりだ。「おやじとしての責任がある。体が動く限り、仕事を続ける」。旗指物の出来栄えを確認しながら、清実さんは決意を込めた。
    ◇  ◇
 相馬野馬追は7月26日から28日までの3日間、同区の雲雀ケ原祭場地をメーンに開催される。

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