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【ADR和解案】 一部拒否、回答延長に批判 弁護団「損害軽視」 東電「吟味、検証に時間」

 東京電力福島第一原発事故を受け、県民らが政府の原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、東電がセンターの和解案を一部拒否したり、受諾するかどうかの回答期限延長を求めたりするケースが少なくとも十数件に上っている。東電は新・総合特別事業計画(再建計画)に「和解仲介案を尊重する」と明記したが、守られていないとの批判も聞かれる。

■氷山の一角
 原子力損害賠償に関する手続きの流れは【図】の通り。紛争解決センターは、東電が和解案に異議を申し立て一部を拒否したケースや、回答期限延長を求め遅延損害金を課せられた案件が昨年は計4件あったと公表しているが、平成23、24の両年分については明らかにしていない。
 一方、弁護士約400人でつくる「原発被災者弁護団」は、担当する約450件の原子力災害ADRのうち、これまでに少なくとも十数件が和解拒否や延長要求に当たるとしている。
 この中には、浪江町民による精神的損害賠償の増額申し立てや、飯舘村の居住制限区域の住民が帰還困難区域と同等の賠償を求めた申し立てなどが含まれていない。弁護団関係者は「(十数件は)氷山の一角にすぎない」とみている。

■波及を恐れ?
 浪江町民約1万5600人が精神的損害賠償の増額を求めたADRの回答期限は30日だったが、東電は前日の29日に期限延長を要望した。月額一律5万円の上乗せを求める和解案を受け入れれば、東電の追加支払額は約200億円に上る見通し。町支援弁護団は「周辺市町村にも賠償増額を求める動きが広がるのを懸念しているのではないか」とみている。
 町側は30日、東電の回答期限延長要求に抗議し、早期の和解案受諾を求める上申書をセンターに提出した。「既に177人の申立人が亡くなっている。不当な遅延であり、早期に回答する義務がある」とした。馬場有町長は「信義に反する」と非難している。
 和解案受諾についての回答が延期され、申し立て内容の一部が拒否された飯舘村蕨平地区の志賀三男区長は「東電の対応は被災者の心情を踏みにじるものだ。住民の生活再建の道が閉ざされる」と憤りを隠さない。
 一方、東電は「原子力損害賠償紛争審査会の中間指針と和解案を吟味、検証するために時間が必要な場合がある」と説明している。

■ADR形骸化
 東電は昨年12月にまとめた再建計画で、原子力損害賠償「3つの誓い」の1つとして「和解仲介案の尊重」を掲げている。
 原発被災者弁護団の秋山直人弁護士は「和解案拒否や回答期限の延期は『3つの誓い』に反している。損害の軽視で、ADRを形骸化させている」と批判。和解に至らない場合は、煩雑な裁判手続きを簡略化して訴訟に移行できるよう法制化すべきとの考えを示している。
 原子力災害の損害賠償に詳しい大阪市立大の除本理史教授は「広範で深刻な被害に追い付いていない」と制度上の限界を指摘した上で、「法律で東電に和解案の受諾義務を負わせることは重要だが、それ以前に被災者に向き合う誠実な姿勢が問われている」と話している。

【背景】
 原子力損害賠償紛争解決センターへの和解仲介申し立ては23日現在、1万1518件に上る。このうち和解が成立したのは8197件(一部和解は1133件、仮払い和解は103件)。仲介の取り下げや打ち切りなどを除いた2932件は現在も審理が続いている。和解案提示までの平均的な審理期間は約6カ月だが、2932件のうち約200件は平成23、24両年の申し立て。東電と被害者の主張が食い違い、審理が長期化している。

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