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(2)都路・避難指示解除1カ月 忙しさいつまで続く

依頼先の民家に畳を入れる根内さん

 「地見城(じけんじょう)の住民は今後1年以内にかなりの人が戻ると思う。帰還の歩みに影響しないように作業を進めたい」
 避難指示が解除された田村市都路町の地見城集落で畳店を営む根内京二さん(55)は29日、表替えを頼まれていた畳を都路町内の知人宅に納めた。
 この日は傷んだ根板の修理も急きょ、買って出た。慣れた手つきでのこぎりや電動ドリルを操り、ほぼ一日かけて畳を敷き終えた。大型連休を返上し、妻の富起子さん(52)と仕事中心の日々を送っている。
 都路町の東部は東京電力福島第一原発事故で警戒区域となり、根内さんも三春町に避難した。平成24年4月、日中、立ち入りができる避難指示解除準備区域に再編されたのを機に帰還準備を進めた。昨年8月に登録制で宿泊が認められると、自宅に戻って店を再開した。
 再開以来、帰還を見据える都路町や南隣の川内村などの顧客から畳の注文が相次いでいる。それでも、根内さんの頭には「この忙しさはいつまで続くのだろうか」という不安がよぎる。
 根内さんが心配するのは商売の行く末だ。畳は一度、表を替えれば数年間は持つ。再開後の受注のペースは原発事故以前の3、4倍に上る。だが、依頼の多さは将来の需要を先取りしている裏返しでもある。「注文が途絶えてしまえば、別の仕事で生計を立てるよう考えなければいけない」
 根内さんは自宅と作業場の修繕や機械の更新など、地元での再出発に必要な費用を全て自前で賄った。資金面の公的な支援は受けなかった。「いち早く地元に戻った人の暮らしを国はどう支えるつもりなのか」。疑念は拭えない。都路町商工会によると、原発から半径20キロ圏の会員8事業所のうち、地元で事業を再開したのは根内さんを含めて2事業所だけだ。
 「今はとにかく、できることを続ける」。根内さんは、複雑な心境を紛らわせるように、一つ一つの仕事に打ち込んでいる。

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