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復興への闘い 震災3年の現実(13)第2部 市町村の模索 絞り出した開発案

いわき市中央台の仮設住宅(右)。左は震災後、急速に新築された住宅。市街地に近い住宅地は空きがなくなっている

 いわき市都市計画課長の西原衡作(こうさく)=(59)=は年明け早々の1月半ば、市内の不動産業者を市役所に呼んだ。宅地不足の現状を把握するためだ。「物件の手持ちがない」。出席者の回答は同じだった。宅地がどのぐらい足りないのか見通せなかった。
 並行して宅地不足対策の一案を進めた。宅地造成を制限している市街化調整区域でも一定規模の開発行為が可能となる「市街化調整区域における地区計画制度」の活用だ。
 地区計画制度は、民間が計画を立てて開発する。市街化調整区域内で道路や公園などの公共施設を造る場合などに利用される。開発を希望する住民や民間会社側が、配置案となる地区整備計画を作り、市が計画を決定する。市の許可を受け、民間企業が開発する流れだ。職員がたどり着いたアイデアは、土地造成の目的に関する要件を緩和し、地区計画制度の運用基準に震災に伴う宅地需要増加への対応を追加することだった。4月下旬に発表した。計画決定後、同意した地権者が民間業者と協力して開発を進める。年度内に造成を始め、平成27年度当初に供給を始める方針だ。
 一方、県による市街化調整区域を市街化区域に見直す「線引き」の変更は、3年後になると見込む。将来的な需要を見据え市街化区域が広がれば、その後の宅地開発がしやすくなる。市は地区整備計画に基づく宅地造成が「線引き」を実質的に前倒しする意味があると強調する。
 計画の早期実現に向け、都市計画課は地権者への制度説明と同意の取りまとめを始めた。ただ、新たな宅地を過剰に造る懸念が残る。供給が多過ぎれば整備した宅地が売れ残り、地権者や開発業者の負担になる恐れがある。
 都市計画課は市街化調整区域の宅地造成規模を把握するため、実際に必要な宅地を推計する作業を始めている。復興庁が実施した東京電力福島第一原発事故に伴う避難市町村の住民意向調査から、将来的な宅地需要を導き出す。
 職員が作業に打ち込んでいた3月、国土交通省は県内の公示地価を発表した。全国の住宅地の上昇率上位10地点に市内3地点が入った。いずれも市中心部からやや離れた新興住宅地だった。「住民の土地探しは周辺部へ移っている」。職員は確信した。
 「需要の把握調査は難しい作業だが、必要な開発面積を見極めるためにやるしかない。われわれはできることをするだけだ」。西原は冷静に言い切る。今秋を目途に推計値を出す。(敬称略)

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