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今を生きる リンドウ栽培に挑む 花と笑顔咲く古里に 農地守り村再生

山々に囲まれた川内村でリンドウの試験栽培をする農地を見詰める河原さん

■川内の河原修一さん 53

 川内村の会社社長河原修一さん(53)は代々受け継がれてきた農地を守るため、今月末にもリンドウの試験栽培を始める。東京電力福島第一原発事故に伴う風評で食用作物の生産をためらう農家もいる中、消費者の不安が少ないとみられる花の栽培で再起を期す。「古里を花でいっぱいにして、帰還した住民を笑顔にしたい」。避難指示解除準備区域での挑戦が始まる。
 河原さんにとって未知の花卉(かき)栽培。「今後も地元で生活していくためだ」。同村毛戸地区の田んぼを見詰め、自分に言い聞かせるように語った。
 河原さんは東日本大震災前、双葉地方森林組合に勤務していた。農地や山林は過疎化が進み、荒れていった。原発事故による住民の避難が追い打ちを掛けた。外来種などの雑草が茂り始めた古里の風景に危機感を抱いた。
 震災から約半年後に同森林組合を退職。農林業を中心とした事業を展開しようと株式会社「緑樹」を平成24年3月に設立した。
 しかし、その思いは届かず、現在の主な業務は地域の除染だ。放射線量を低減させる方が農林業よりも先という現実だった。
 河原さんの約10アールの田んぼは除染により、放射線量が低減した。「営農再開の道筋を見いださなければ、村は衰退する」。長期的に生計を立てるため、リンドウ栽培を決意した。県の事業を活用した試験栽培にこぎ着けた。
 県花きオリジナル品種「ふくしまさやか」「ふくしましおん」など計13種類を植え、村の気候、土壌などに合った品種を探る。
 県によると、リンドウは夏涼しく、一日の最高気温と最低気温の差が大きいほど育ちやすい。阿武隈山系に位置する村は生育に適しているとみられる。今月植える苗は、来年7月から10月にかけて出荷できる見通しだ。
 しかし、村内にリンドウ栽培の実績はない。不安もよぎる。「作っても買ってくれる人がいないのではないか」。除染されていない山から雨などで放射性物質が農地に流れ込み、再び放射線量が高くなる懸念もある。
 それでも帰還した村民が、農地一面を彩るリンドウの花を前に笑顔になる光景を夢見る。「10年後、この集落が消滅しているのは寂しい。この地に根差して生きていくんだ」

■県、営農再開を支援 花卉類は4町村対象
 県は試験栽培を通し、農家の営農再開を支援している。対象となる農作物の種類は市町村の意向を踏まえて県が設定する。
 花卉類は平成25年度、川内村の農家だけの取り組みだったが、26年度は川内村の他、川俣、広野、浪江の3町の農家が挑戦する。川俣町山木屋はリンドウを3アール、広野町はコギクなどを3アール、浪江町はリンドウやトルコギキョウを4アールで試験栽培する。
 県は「花卉類は消費者が放射性物質への不安を抱きにくいと、農家が判断したのではないか」と分析し「避難区域などでの営農再開につなげていきたい」としている。

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