東日本大震災アーカイブ

復興への闘い 震災3年の現実(17)第2部 市町村の模索 人手求め農家雇用

除染作業員が寝泊まりする宿舎。作業員が増えれば新たな建設用地確保などが必要となる=原町区

 除染作業員の特殊勤務手当を減額する―。4月半ばに国が示した避難区域など除染特別地域での措置は、南相馬市にとって「寝耳に水」だった。市が除染業務を発注している汚染状況重点調査地域には、特定避難勧奨地点など空間放射線量の比較的高い場所があった。重点調査地域で働く作業員に手当はなく、市が除染特別地域と同等の手当支給を国に訴えていた最中だった。
 市復興企画部除染対策課長の羽山時夫(54)は「まるで国に肩透かしをされたようだ。これで作業員が集まるのだろうか」と厳しい表情を見せた。市発注の除染作業員の賃金は1日当たり約1万6000円で、公共事業など各種工事とほぼ同じ水準だ。各種工事で賃金が上がれば、除染の作業員不足はさらに深刻化する。市が手当の支給を強く求めていた背景には、4月末に始める農地除染があった。
 「避難区域の除染も始まり、これ以上、作業員を集めるのは難しい」。昨年夏、農地除染担当の職員は農地除染の作業員対策を話し合った。平成26年度内に農地4800ヘクタールと農業用水路1500キロで放射性物質を取り除いたり、表土を埋めたりする。計画通りに進めるには、1日当たり数百人の作業員が必要になる。人員不足になるのは明らかだった。
 「農家に協力を呼び掛けてはどうか」。職員の考えは一致した。昨年10月、市内の農家にアンケートを実施した。約2000戸のうち、約200戸から農地除染に協力する意向を得た。全体の一割にとどまったが、一人でも多くの手を借りたかった。
 今年4月末、市はまず、作業員約50人態勢で農業用水路の除染を開始した。農家の参加はこれからだ。業務を受注した企業が農家を作業員として雇う。田んぼや畑、農業用水路の除染を想定している。農家への説明会は9日に市内で開かれる。発注者として市職員が同席する。
 市は引き続き、国に対し農地を含めた汚染状況重点調査地域の手当支給を求める。除染と他の事業の給与に差がつけば、除染作業員の確保につながると考えるからだ。
 市は今年度を市街地と農地の除染を本格化させる年とし、復興企画部の除染対策課を9人から15人に増やした。農地除染課を新設し、14人を配置した。懸案の作業員確保をはじめ、除染後の線量測定、住民の反応確認、仮置き場に近い住民との合意形成を進める。
 作業員宿舎の確保は企業が行う。職員は住民との間に入り、仲介する。時折、作業員が摘発されるニュースが流れる。職員は作業員に対する住民の風当たりが強くなっているのを感じている。ただ、復興に不可欠な力だ。職員は企業と一緒に、宿舎建設候補地の地権者や周辺住民に説明し、協力を求めている。
 市復興企画部除染担当理事の田中稔(56)は「市民に寄り添いながら人手を求め、計画通りに除染を進めるのがわれわれの役割」と語る。(敬称略)

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