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胸詰まる運動会の季節 輝く笑顔まぶたに

■南相馬市原町区萱浜 小西竣君(12)静空さん(9)俊丸さん(63)

 南相馬市原町区の会社員小西康弘さん(40)は東日本大震災の津波で、長男・竣(しゅん)君、長女・静空(しずく)さん、父・俊丸(としまる)さんの3人を亡くした。小学校の運動会の季節がやって来た。2人の子どもと校庭を駆け回った思い出がよみがえり、胸が詰まる。薫風そよぐ5月の空を見上げ、息子と娘にささやく。「お父さんは前を向いて頑張っているよ」
 原町区にある大甕(おおみか)小6年の竣君、妹で同小3年の静空さんは、ともに書道が得意で仲のいいきょうだいだった。
 竣君は七段、静空さんは三段の腕前で、学校のコンクールなどで毎回、賞を受けていた。2人はお父さん子で、康弘さんが帰宅すると一緒に遊んだ。
 大甕小の運動会は毎年5月に開かれる。竣君と静空さんは保護者が子どもを一輪車に乗せて速さを競う種目を楽しみにしていた。競技中、康弘さんはわざと竣君と静空さんを一輪車から落とし、みんなの笑いを誘った。竣君はわざと一輪車から落ちそうなそぶりをして盛り上げた。静空さんは「パパ、許してよ」と恥ずかしがった。
 俊丸さんは農業の傍らタクシー運転手をしていた。農家の友人を自宅に招き、楽しく酒を飲むのが好きだった。真面目な性格で、量は控えめ。竣君と静空さんをめったに叱らず、テストで100点を取ると、褒美に小遣いをあげる優しい祖父だった。夕方、書道塾に2人を迎えに行く時もあった。
 震災の日の朝、竣君と静空さんはいつも通り、康弘さんに「行ってらっしゃい」と見送られて登校した。地震発生後、自宅にいた俊丸さんは車で学校に駆け付け、2人を乗せた。自宅に戻り、津波にのまれたとみられている。
 4カ月後の7月、大甕小で卒業式が行われた。康弘さんは竣君の代わりに証書を受け取った。今年3月の同小卒業式にも臨み、静空さんの証書を受けた。
 震災から3年2カ月となった。生きていたら、竣君は高校に入学し、静空さんは中学に進んだ年だ。市内のアパートで暮らす康弘さんは毎朝の出勤途中、萱浜にあった自宅跡に寄る。「行ってくるからね」。震災前と同じように声を掛け続けている。
 大甕小の運動会は17日に開かれる。「しゅん、しずく...」。あの日、校庭に輝いた無邪気な2つの笑顔が心の中を静かに駆け抜ける。

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