東日本大震災アーカイブ

本紙「ベクレルの嘆き」が受賞 農業ジャーナリスト賞

農業ジャーナリスト賞を受けた連載「ベクレルの嘆き 放射線との戦い」(第3部未知への挑戦)

 農林水産業や食料問題、農山漁村の地域問題などに関する優れた報道を表彰する第29回農業ジャーナリスト賞に、福島民報社の連載「ベクレルの嘆き 放射線との戦い」(第3部未知への挑戦)が選ばれた。16日、主催する農政ジャーナリストの会が発表した。東京電力福島第一原発事故で打撃を受けた本県の農林水産業の現状と再生の取り組みを追った連載で、「原発禍の中で苦闘する農林漁業者の思いが伝わる秀作」との評価を受けた。6月9日、東京都の日本プレスセンタービルで表彰される。
 小田切徳美明治大農学部教授らを委員とする選考委員会が審査した。選考理由として、放射性物質の深刻で悲惨な現状が、地元紙でしかできない丹念で丁寧な取材で明らかになった点、検査機器開発に携わる研究者を追い、科学的なアプローチで伝えるなど興味深くまとめている点を挙げた。その上で「コメの作付けを始めた農家、試行錯誤を続ける特産『あんぽ柿』や原木シイタケの生産者らの取材を通して消費者に県産農作物に対する理解を促し、県内農業の再生を願う福島民報社が、社を挙げて取り組んだ思いが伝わる。県民紙ならではの企画」と高く評価した。
 農業ジャーナリスト賞は、農業関係の報道、出版などに携わるジャーナリストや研究者らでつくる農政ジャーナリストの会が昭和61年に設けた。受賞作品は、国際農業ジャーナリスト連盟(IFAJ)が世界の加盟団体に呼び掛け、農業関連の記事や映像の中から優秀な作品を表彰する「Star Prize」賞の日本の推薦候補となる。

■県民の記録、高い価値 「ベクレルの嘆き」収録の「福島と原発 2」

 16日に発表された第29回農業ジャーナリスト賞を受けた連載「ベクレルの嘆き 放射線との戦い」(第3部未知への挑戦)を含む全連載企画は、福島民報社が今年3月に早稲田大学出版部から発刊した「福島と原発 2 放射線との闘い+1000日の記憶」に収録されている。同賞の選考理由の中で、この本についても「震災と原発事故を風化させないための『県民の記録』として価値がある」との評価を受けた。
 「ベクレルの嘆き 放射線との戦い」は、平成25年1月3日付から11月8日付まで計5部、96回(番外編を含む)に及んだ長期連載で、原発事故に直面した県民の放射線への不安や葛藤、リスクコミュニケーションをめぐる政府や専門家の対応、農林水産業の現状と再生の取り組み、除染の現状と課題、福島第一原発の汚染水問題などを追った。
 このうち、「第3部未知への挑戦」は25年5月13日付から6月7日付まで計23回にわたり、コメや特産「あんぽ柿」、シイタケの原木の放射性物質低減への取り組みや、漁再開への漁業関係者の挑戦、検査機器開発に向けた研究などを科学的なアプローチで伝えた。
 連載の開始以降、「放射線に対する理解が深まった」「福島の現状を理解する手助けになる」など全国から多くの投書やメール、電話が寄せられ、大きな反響を呼んだ。
 収録されている本には、作家の柳田邦男さんが「福島で何が起きたのか、安全への納得につながるリスクコミュニケーションはいかにあるべきか、多岐にわたる記者たちの丁寧な深掘取材から生み出されたこの記録と提言は、判断に不可欠の要素を知るうえで必読の書だ」と推薦文を寄せている。
 本は46判、ハードカバー(468ページ+口絵8ページ)。「3・11」から平成25年12月4日までの1000日にわたるドキュメントも収録している。定価は2800円(税別)。県内をはじめ、全国の主要書店で販売している。
 問い合わせは福島民報社事業局出版部 電話024(531)4182へ。

カテゴリー:福島第一原発事故

連載「ベクレルの嘆き 放射線との戦い」を収録した「福島と原発 2 放射線との闘い+1000日の記憶」