東日本大震災

「原発事故関連死」アーカイブ

  • Check

(78)歯止め 支援の現場から 1年更新人材集まらず 「恒常的組織が必要だ」

多職種のスタッフが集まって対応を協議するなごみのミーティング。長期的にどう人材を確保していくかが課題だ

 相馬広域こころのケアセンターなごみは、東京電力福島第一原発事故による避難者の見守り活動を続けている。原発事故から3年余りが過ぎた今年3月27日午後、相馬市の相馬事務所に内閣府の職員二人の姿があった。東日本大震災、原発事故が原因とみられる自殺者の数が他の被災県と比べ突出している現状を受け、自殺予防対策などの意見を聞くためだった。
 「自殺の恐れのある人を見つけ出すには時間を掛けて人間関係をつくる必要がある。そのためにはマンパワーが少なすぎる」。センター長で精神科認定看護師の米倉一磨さん(40)が人手不足の実情を訴えた。
 現在、センターのスタッフは約10人。保健師をはじめ、看護師、社会福祉士、作業療法士、精神保健福祉士、保育士ら多職種にまたがるのが特徴だ。知識や経験が異なる立場から、それぞれが担当する被災者に関して意見を交換し、最善の対応を選択している。人数を増やしたいが、人材確保は難航している。
 スタッフは県の委託事業として活動しているため、契約は1年ごとに更新される。「いつ県の予算が切られ、活動できなくなるか分からない」という不安を抱えているのが実情だ。1年更新という不安定な雇用環境も働き手が敬遠する要因になる。このままでは立ち行かなくなる-。米倉さんは強い危機感を抱く。「長く働ける環境をつくらなければ、多くの有能な人材は集まらない」

 米倉さんは南相馬市出身。原町高を卒業後、航空自衛隊を経て茨城県の看護学校で正看護師の資格を取得した。その後、南相馬市に戻り、市内の精神科の雲雀ケ丘病院に看護師として勤務した。福島医大大学院の社会人枠で精神看護を学び、修士課程を修了した数日後に震災が発生した。
 妻の実家のある栃木県に避難した。しかし、古里を見舞った最大の危機に「自分の力を生かさなければ」との思いに突き動かされ、10日後には南相馬市に戻った。病院は既に休診となっていた。福島医大が発足させた「こころのケアチーム」にボランティアで参加した。避難所の見守りなどに奔走した。
 県相双保健事務所の臨時職員を経て平成23年11月に発足したNPO法人「相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会」のメンバーとなった。翌年1月、つくる会がセンターを開所した。米倉さんは地元での経験が買われてセンター長を命じられた。

 相馬市のセンター相馬事務所に併設されたメンタルクリニックなごみの新規患者は増加傾向にある。復興が進んでいるように見えても、今後、長引く避難生活の心労から精神的疾患を発症させる恐れがある人は今後も増えるとみられる。自殺者を食い止めるにも一層の対策が必要だ。
 「もはや被災直後の緊急的な組織では対応できない。恒常的な組織として地域に根付かせるべきだ」。米倉さんは提言する。

カテゴリー:原発事故関連死

「原発事故関連死」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧