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今を生きる 3000人の笑顔で返礼 9月県民の写真愛媛で展示 土湯の「絆」展に心打たれ

18日に3000人分の笑顔を撮り終えた矢口さん

■福島の主婦 矢口洋子さん 70

 福島市岡部の主婦矢口洋子さん(70)が撮りためた県民の笑顔の写真が9月に愛媛県鬼北(きほく)町で展示される。18日、展示する3000人分の撮影を終えた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被災者を元気づけようと、福島市土湯温泉町で開かれている鬼北町民の笑顔の写真展に感動した矢口さんが、お礼に福島の笑顔を届けようと3カ月がかりで撮影した。800キロ離れた福島と愛媛が笑顔でつながる。
 「はい、笑ってくださーい。すてきな笑顔ですね。ありがとうございます」
 矢口さんは18日、福島市で開かれた福島キワニスクラブの例会場で、22人分の笑顔を撮影した。「夢中でやってきた。やっと目標の3000人分になった」と、ほほ笑んだ。
 撮影を始めたのは、震災で廃業した福島市土湯温泉町の旧いますや旅館で今年3月から開かれている写真展「写真の輪 絆プロジェクト」を見たのがきっかけだった。愛媛県鬼北町の町民が笑顔で手をつないでいるような壁一面の組写真に目を見張った。
 撮影したのは、鬼北町のカメラ店主だった故加賀城(かがじょう)孝さん=享年55歳=と嗣子(つぎこ)さん(54)夫妻。孝さんは「遠く離れた東北地方に店を休んで行けないが、写真の力で震災と原発事故に苦しむ被災者を励ましたい」と、両手を横に伸ばし、ニッコリと笑った町民の写真を並べて展示しようと思い立った。
 平成24年春から仕事の合間に撮影を始めた。しかし、約1200人分を撮り終えた同年9月に事故で急逝した。嗣子さんは孝さんの遺志を継いで900人分を撮影した。福島市の土湯温泉観光協会が鬼北町名産のキジ肉を旅館の名物にしようと同町と交流していたのが縁で、嗣子さんは2100人分の写真を協会に届けた。
 写真が趣味の矢口さんは、加賀城さん夫妻の思いに心を揺さぶられた。「今度は福島から愛媛の人たちに元気を届けたい。福島と愛媛を写真の輪で結びたい」。写真展に足を運んだ1週間後から加賀城さん夫妻と同じ手法で撮影に取り掛かった。
 福島市土湯温泉町のイベントや福島民報社のスマイルとうほくプロジェクトの参加者の他、県内の名所も知ってもらおうと、福島市の花見山や三春町の三春滝桜、猪苗代町の猪苗代湖などでも笑顔を集めた。
 3000人の笑顔は9月16日から鬼北町の街角ギャラリー「なんでも館」で展示される。嗣子さんは「遠く離れていても1人ではなく、みんなつながっていることを形に表すことができる」と写真の現像など協力を惜しまない。
 「ファインダーをのぞくと加賀城さん夫妻と心が1つになる思いがした。写真撮影に応じてくれた多くの人に感謝したい」と矢口さん。写真展の開催を心待ちにしている。

【土湯で30日まで写真展】
 写真展「写真の輪 絆プロジェクト」 土湯温泉観光協会が加賀城嗣子さんに旧いますや旅館1階を提供して開催している。今月30日まで。鑑賞無料。終了後、写真は加賀城さんの元に返却される。問い合わせは、土湯温泉観光協会 電話024(595)2217へ。

カテゴリー:連載・今を生きる

愛媛県鬼北町から届いた笑顔の写真。今月末まで福島市土湯温泉町の廃業した旅館に展示されている

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