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【国の個人線量活用方針】除染基準転換に賛否 賛成「効果薄い作業減」 反対「住民の混乱招く」

 環境省が個人被ばく線量を活用した除染方針を7月中にも策定するのを受け、除染を担う市町村には戸惑いが広がっている。空間放射線量に換算した除染の目安「毎時0・23マイクロシーベルト」以上の地域の住民でも、年間追加被ばく線量は1ミリシーベルト以下になるケースが多い。市町村からは「個人被ばく線量が基準になれば大幅な線量低減を見込めないエリアの除染事業を縮小できる」と評価する声がある一方、「住民が混乱する」として、毎時0・23マイクロシーベルトの目安を維持する動きもあるなど対応が分かれている。

■揺れる現場
 環境省の個人被ばく線量に基づく除染方針の策定は今月、福島、郡山、相馬、伊達の4市を交えた除染の勉強会で打ち出された。
 勉強会に加わっている伊達市は平成24年7月から25年6月までバッジ式積算線量計を用いて市民約5万2000人の年間追加被ばく線量を測定。毎時0・23マイクロシーベルト以上の地域の住民を含め、7割弱の個人被ばく線量が年間1ミリシーベルトを下回った。個人線量に基づけば、毎時0・23マイクロシーベルトより若干高く、除染効果が薄いとみられる地域の事業を縮小できるという。同市の担当者は「早く空間線量の呪縛から脱するべき」と環境省の新たな除染方針に期待する。
 一方、田村市の担当者は「既に空間線量の目標に向かって作業が進んでいる」と戸惑いを隠さない。個人被ばく線量への基準変更により除染が縮小すれば、住民の不安につながりかねないためだ。市の除染実施計画には目標として「毎時0・23マイクロシーベルト」を明記しており、空間線量に換算した目標を変更しない考えを強調した。

■割れる見解
 環境省の新しい除染方針に対し、専門家の間でも意見が割れる。
 特定非営利活動法人「放射線安全フォーラム」の多田順一郎理事は「毎時0・23マイクロシーベルトという目安が独り歩きしている」と除染をめぐる政府対応を批判する。その上で「空間放射線量から個人被ばく線量の管理にシフトすべきだ。結果として効果の少ない除染作業が減る」と環境省の方針に賛同している。
 一方、東北大生活環境早期復旧技術研究センターの石井慶造センター長は「原発事故発生後、屋外活動を控えている県民は多い。そうした中で個人被ばく線量を計ってみても、震災前と同じ生活をした場合、追加被ばく線量が1ミリシーベルト以下になるとは限らない」と指摘。「まずは空間線量の目安を目指して除染すべき」と慎重な議論を求める。

■明確な基準を
 行政や専門家の中でも意見が分かれている現状に、県民は分かりやすい基準の必要性を指摘する。
 福島市の主婦佐藤早苗さん(54)は「除染が終わり安心していたのに...。国、県、市町村と専門家が一体となって、統一した基準を作ってほしい」と求めている。

【背景】
 環境省は放射線防護のための長期目標として個人が受ける年間の追加被ばく線量(個人線量)を1ミリシーベルトに設定している。同省は年間1ミリシーベルトから換算し、空間放射線量が毎時0・23マイクロシーベルト(推計値)以上の地域を汚染状況重点調査地域に指定した。このため、県内の多くの市町村が除染計画を策定する際に毎時0・23マイクロシーベルト未満を除染目標として定めた。しかし一方で、同省は除染作業の線量目標は設定しておらず、毎時0・23マイクロシーベルトに関しても「あくまで汚染状況重点調査地域の指定の基準。除染作業の目標ではない」としている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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