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【第一原発地下水バイパス】 排出効果見通せず 水位計測に時間 井戸1カ所基準超 東電「問題なし」

 東京電力福島第一原発の汚染水対策の柱となる地下水バイパスで、対策の効果を把握できる時期の見通しが立たなくなっている。東電は当初、「開始から2、3カ月で効果を確認できる」としていたが、降雨の影響により観測用井戸での水位計測に予想以上に時間を要するという。一方、地下水から排出基準を上回る放射性トリチウムが検出された井戸の使用中止を求める声が出ているが、東電に対応する動きはない。

■想定以上の雨
 東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者(プレジデント)は27日、Jヴィレッジで記者会見し、開始から1カ月余りが過ぎた地下水バイパスについて「ゆっくりとやりながら効果を待つ」と述べた。
 原子炉建屋近くの3カ所の観測用井戸では、降雨があった日に水位の上昇傾向が顕著で、地下水の水位変動を把握するのは難しいという。東電は当初、地下水くみ上げ開始から2、3カ月程度過ぎれば変動幅を確認できるとみていた。しかし、今年の梅雨の降雨量は想定以上で、水位が下がる時期を見通せなくなったとしている。
 1~4号機建屋には一日当たり約400トンの地下水が流入し、汚染水となっている。東電は一日約300トンの地下水をくみ上げれば、一日数十トンから百トンの汚染水を減らせると試算していた。

■停止求める声
 東電が、法令基準(1リットル当たり6万ベクレル)の40分の1に厳しく設定した排出基準(1リットル当たり1500ベクレル)を上回るトリチウムが地下水から検出されているのは、くみ上げ用井戸12カ所のうち最も南側にある「12番」。排出基準を超えるトリチウムの検出が続き、23日に採取した水は過去最高の1リットル当たり2100ベクレルを記録した。
 この井戸は、昨年8月に高濃度の汚染水300トンが漏えいした地上タンクから最も近い。東電は土壌に浸透した放射性物質が地下水に流入しているのが上昇傾向の原因とみている。東電は現在、問題の井戸と残る井戸11カ所からくみ上げた地下水を混ぜて一時貯留タンクで保管し、排出基準を下回ったことを確認した上で海洋放出している。
 これに対して、県議会などからは「トリチウムを薄めたとしても、放出すれば県民に不安が広がる」との指摘が出る。問題の井戸からのくみ上げ停止を求める動きに対し、東電は「タンク内でトリチウム濃度が基準を下回れば問題ない」と応じる気配はない。

■県民に寄り添って
 開会中の6月定例県議会代表質問や常任委員会の審議で、県議から県に対し問題の井戸の使用停止を東電に働き掛けるよう求める意見が相次いでいる。
 27日の企画環境委員会で、県の渡辺仁原子力安全対策課長は「一時貯留タンクに集めた段階で基準を下回れば問題がない」とした上で、「県として監視を続ける」と述べるにとどめた。地下水くみ上げ量が減り汚染水が増え続ければ、汚染水の貯蔵タンクが不足してしまう。県はそうした事態を懸念しているのではないか、との指摘もある。
 県議の一人は「廃炉作業での安心を求める県民感情にいかに寄り添うか。県は対応を問われている」と訴える。

【背景】
 地下水バイパスは、高濃度汚染水がたまっている福島第一原発1~4号機建屋などに流入する前に地下水をくみ上げて海へ放出し、汚染水の増加抑制を目指す。先月21日に海洋放出を開始した。くみ上げ用井戸1カ所で放射性トリチウムの上昇が続き、一時くみ上げを停止した。東電は排出基準を上回った地下水を一時貯留タンクで他の井戸11カ所の地下水と混ぜ、基準を下回ることを確認した後、海に放出している。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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