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【営農再開に危機感】 飯舘村区域再編あす2年 除染で土質低下 管理団体つくり対策検討

 東京電力福島第一原発事故に伴う飯舘村の避難区域再編から17日で2年が経過するが、住民帰還後の営農再開に向け農地の土壌改良が課題となっている。国による農地除染で土地の生産力が低下し、原発事故前の状況に回復するまで長期間を要するとみられる。村民有志が8月にも、農地の管理団体を結成し対策に乗り出す。

■養分も除去
 環境省が飯舘村内で実施する農地除染の対象は「居住制限」「避難指示解除準備」両区域内の2200ヘクタール。区域内ほぼ全域で土壌1キロ当たりの放射性物質は5000ベクレル程度となっており、同省は「1キロ当たり5000ベクレル超の放射性物質が検出された場合、農地表面約5センチを剥ぎ取る」とする除染基準に基づき、表土除去を行っている。
 放射性セシウムは土壌の上層に集中して含まれているため、表土除去は効果のある手法として期待されている。しかし、セシウムと同じ層にはミネラルやカリウムなどが豊富にあり、除染によって土壌の養分まで失われてしまう。
 同省は放射性物質に汚染されていない山砂などを除染を終えた水田や畑に敷き詰めているが、農業関係者は山砂を農作物の栽培に適した土壌に改良するには相当期間を要するとみている。
 村西部の臼石行政区で約二ヘクタールの農地を所有している佐藤春男さん(65)は「何代にもわたって耕作を続け、豊かな農地が築かれた。化学肥料などをまいても、農地は簡単には元に戻らない」と指摘している。

■作物の品質心配
 飯舘村内ではコメやインゲン、ジャガイモなどをはじめ、肥沃(ひよく)な土を生かして甘さの強いカボチャなどの栽培が続けられてきた。生産者は除染によって土質が変われば、原発事故以前の品質維持が難しくなるとみている。
 村南部の前田八和木行政区でオリジナル品種のカボチャを栽培してきた渡辺とみ子さん(60)は「土壌の養分が少なくなれば、農作物の甘みも減ってしまうだろう」と表情を曇らせている。
 一方、村農業委員会の菅野宗夫委員会長(63)は、避難生活の長期化などで営農再開の意欲を失いかけている農業者は少なくないとみている。「国内の先進地視察など、農家のやる気を向上させる事業を継続的に実施してほしい」と国や県に訴えている。

■遅い除染足かせ
 村への帰還後、営農再開を目指す農家の有志は土壌改良を目指す管理団体を設立する。
 除染後の農地を除草し、土壌の養分が目減りするのを防ぐ。三つ葉を栽培し、そのまま田畑にすき込んで肥料にする。村は作業費用として、10アール当たり3万5000円を上限に管理団体に支払う。
 ただ、仮置き場の確保が難航した影響で除染が終了した農地は計画全体の約4%にとどまっており、管理団体の活動が円滑に進むかどうかは不透明だ。
 菅野典雄村長は「除染は遅れ気味だ。作業のスピードアップを環境省に要望している。今後、管理団体の農地再生の取り組みに期待したい」と話している。
 村には一部の村民から表土除去以外の手法で農地除染するよう求める声が届いているという。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故で全域が計画的避難区域となった飯舘村は平成24年7月17日、「帰還困難」「居住制限」「避難指示解除準備」の3区域に再編された。国直轄除染は同年9月から始まった。帰還困難区域の長泥行政区を除いた宅地や農地、道路などを対象に28年12月までに終了させる計画だが、5月末現在の宅地の完了率は9%、農地は4%、道路は1%にとどまっている。村は帰還困難区域以外の帰還時期目標を28年3月としている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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