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今を生きる 絆強め野馬追へ 特例宿泊で英気養う

小高区の自宅で出陣の準備を進める佐藤さん

■小高郷騎馬会郷大将 佐藤邦夫さん 69

 26日に幕を開ける相馬野馬追で小高郷騎馬会郷大将を務める佐藤邦夫さん(69)は、夏季の特例宿泊が認められた南相馬市小高区の自宅で武具や馬具の準備を急いでいる。年に一度の晴れ舞台。自宅には出陣の祝いが届く。手伝う後輩も足を運ぶが、東日本大震災前の暮らしには、ほど遠い。それでも伝統の祭りが地域の絆を、より強く結んでくれると信じ、本番を待つ。

 佐藤さんは13歳のころから野馬追に出陣してきた。これまで53回と騎馬会内では現役最多だ。母、妻、長男一家と8人家族。馬も2頭飼っていた。
 「3・11」を境に生活は一変した。東京電力福島第一原発事故により、長男一家は福島市へ、佐藤さんは母、妻と原町区に避難した。自宅に残した馬が気掛かりだった。あるだけの餌を残した。1カ月後、戻った佐藤さんに駆け寄ってきた2頭は痩せ細っていた。毎日、餌を与えるために通ったが、警戒区域に設定された。手放すしかなかった。
 多くの武者が避難しても野馬追が途絶えることはなかった。震災の年、甲冑(かっちゅう)競馬や神旗争奪戦の主要行事は中止されたが、小高郷騎馬会は警戒区域内の相馬小高神社から原町区の多珂神社に場所を移し出陣した。2年目は小高神社での野馬懸(のまかけ)が復活した。
 そして、4年目となる今年の夏、小高区で野馬追期間中の特例宿泊が認められ、小高郷の騎馬武者は住み慣れた自宅から出陣できるようになった。「震災前のように、期間中は自宅で家族と食卓を囲み、酒を楽しんで英気を養いたい」という。
 毎日のように準備のため自宅に通う。25日からは、妻や母と共に自宅に泊まる。本番の26日朝は、一緒に出場する3人の息子ら若手の武者たちの迎えを受け、相馬小高神社で行われる出陣式に向かう。
 特例宿泊とはいえ、古里が一歩ずつ復興に向かっているのを感じる。だからこそ、小高からの出陣を続けていくことに、並々ならぬ決意がこもる。「今なお避難生活を送っている人々への応援、福島を支援してくれた方々へのお礼の気持ちを込めて、威風堂々と出発したい」

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